それから1年後・・・
広報部では、生き生きと仕事をする華子の姿があった。
持ち前の機転の早さとAD時代に培った気配り力のお陰で、みるみる頭角を現した華子は、異例の速さで広報部のエースとなっていた。
以前はプレスリリースのたたき台を作る程度だった仕事も、今では番宣番組の企画にも携わるようになった。AD時代の経験も活かせて、華子は水を得た魚のように仕事に熱中している。
「いつも華やかで、仕事も早い華子さんに憧れてます」
新しく広報部に配属された後輩からそう言われて、思わず笑ってしまったこともある。「華子なのに華やかさがない」と言われ続けていたなんて嘘のようだ。
もちろん失敗することもあり、相変わらず越野部長から怒られる事も多いが、今では彼女の信頼を得て大きな仕事も任されるようになっていた。残業が続いた時などは、越野部長の行きつけのビストロに二人で行くこともある。最近では、ちょっとした恋愛相談もするようになったほどだ。
いつもご馳走になっているお礼にと、越野部長の誕生日にはシャンパンの『ペリエ ジュエ ベルエポック』を贈った。ボトルに施された花の模様が、部長にピッタリだと思ったのだ。
新宿の伊勢丹で見つけたが、友人との食事に行く途中でボトルを持ち歩くのは不安だったため、後日『NOREN NOREN』で購入したものだ。
ボトルを渡し、お礼を言われた後「あなたも使ってるでしょ、あのサイト」と言われた時は声を出して笑ってしまった。尊敬する越野部長と共通点があったことが嬉しくて、胸の奥の方がくすぐったくて、同時に誇らしくもあった。
◆
この1年を振り返り、華子は思う
―女の人生では、嫉妬を買う時期が一度は必要なのだろう。
嫉妬を買わなければ見えない世界、たどり着けない場所がある事を、華子は身を持って体験したのだった。
(Fin.)
■衣装協力:1ページ目/ネイビーニットトップス¥18,000 白トップス¥14,000 モノクロストライプパンツ¥23,000(すべてボッシュ/東京スタイル03-6748-0336)その他<スタイリスト私物> 3ページ目/ベージュオールインワン¥22,000(22オクトーブル03-6836-1825)