岡田を含めたほとんどの同期に、頼樹と付き合っていることは秘密にしている。だが、誘いを断るための言い訳が咄嗟に思いつかず、久美子は正直に頼樹とのことを話した。
案の定、岡田は驚き「じゃあ無理だな。このこと、頼樹には黙っといてな」と気まずそうに言うと、久美子とは逆方向のホームに続く階段を駆け降りて行った。
突然の出来事に驚きながらも、何かの気の迷いだろうと特に気にしないよう努めた。
◆
この数日後に、頼樹から合コン話を聞かされたのだ。岡田とデートしようなんて思いもしなかった。だが頼樹の合コンの話を聞いて久美子の怒りは爆発し、ある計画を思いついた。
頼樹と奈緒の合コンの日、同じ時間、同じ店で岡田とデートする。もちろん、山崎奈緒なんかに負けないくらいとびきりおしゃれをして行くのだ。
自分に自信を取り戻してきた久美子は、いつもよりさらに強気になっている。岡田を利用しているようで申し訳ない気持ちもあるが、この計画が終わればきちんと謝罪するつもりだ。
ーでも、もしかしたらこのまま岡田との仲を深めた方が良いのかも……?
頭をよぎる、これまで考えもしなかった未来。
女性は、自分が好きになった人より、自分を好きになってくれた人と一緒になった方が幸せだと言う人は少なくない。実際、そう言っている人の方が家庭円満なケースが多いようにも思う。
久美子の中で、新たな選択肢が出てきた事に、久美子自身が一番驚いた。
勝負の日を見定め、女は準備に励む・・・
頼樹の家を飛び出て、そのまままっすぐ家に帰った。
気分転換にシャワーを浴びて、心を落ち着かせようと念入りにヘアケアに時間をかけることにした。シャンプーをして、「トリコン」と「うちサロ」までの3ステップを終えると、心が少しだけ落ち着く気がする。
トリートメントの成分が髪全体に行き渡るのを感じながら、久美子の心のささくれも少しずつ解けていく気がする。だがやはり、今回の頼樹の行動は許せるものではない。
負けられない勝負の日は、もうすぐだ。
次回、11月18日(金)更新
最終回!久美子の計画は、吉とでるのかそれとも?女たちの戦いの行方は……?!