上質な傘を持つ男が放つ、ビニール傘男にはない残り香(3/3)[東京カレンダー

近づきたくても近づけない、あと1cmの距離感

それからですか？

何度かデートを重ねて、恋人ような関係になっていました。

でも、ずっと手が届かないといいますか、永遠に縮められないような見えない距離感があって。本当に、あと1cm。

もう1cmだけ近づけたなら、この恋は確信に変わる。そんな微妙な距離でした。

だから、デートの度に、雨が降らないかなぁって。

濡れないように、そっと肩を抱き寄せてくれた克典さんが忘れられなくて。

雨が降ると二人の距離は縮まって、克典さんを近くで感じることができました。あの大きな、濃紺のフォックスの傘の下だけは二人きりの特別な世界で。私は雨の時だけ神様がくれる、その二人きりの世界が大好きで。

でもいつまでも付き合おうと言ってくれなかった克典さん。そして最後は、突然連絡が取れなくなったんです。本当に、突然。

何かあったのか心配になりましたし、電話もしたのですが全く繋がらなくて。今でも、雨が降るとフォックス・アンブレラを持っている男性の後を追いかけしまいます。克典さんかな、って。

本物の男の香りがする人・しない人

結局最後のデート以来、約1年以上克典さんには会っていません。でも、雨が降る度に、あの夜克典さんが傘に入れてくれたこと。そして抱き寄せてくれた温もりを思い出します。

そして、ビニール傘を持っている男性と本物の上質な傘を持っている男性の目利きができるようになりました（笑）

え、どうやって見分けるか、ですか？
そんなの簡単ですよ。

上質な物を知っている、本物の男は“本物の男の香り”がします。香水やボディークリームの香りではごまかせない、暖かくて品の良い香り。

一度、上質な男と付き合ったら、その独特の雰囲気と香りに気づくと思いますよ。ビニール傘を持っている男性からは、その独特で上質な香りを感じたことはありませんね。

今でも、私は雨が降るたびに、克典さんの香りを探しています。

【本日の対談相手】

名前：聖子
年齢：28歳
職業：総合商社　事務職
克典と出会った時期：1年前

次週11月30日水曜日公開予定
昔の会社の後輩・沙奈江が語る克典。しかし人によって全く克典像が違った...

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