SPECIAL TALK Vol.23

~自分の人生を歩もうと決意したとき、ベンチャーしかないという覚悟が生まれた~

ベンチャーでやるべきことはイノベーションを起こすこと

金丸:2010年には、日本でテラモーターズを起業されますが、なぜEVの世界で勝負しようと思ったのですか?

徳重:アメリカでベンチャー企業がイノベーションを巻き起こし、一大産業を築き上げていく姿を目の当たりにしたことが、やはり大きいですね。なぜ日本の大手家電メーカーが弱くなっているのか。それは、技術がアナログからデジタルに変化し、勝つための重要なファクターが変わってきているのに、その変化にうまく対応できなかったからだと思っています。そして、同じような変化が近い将来、自動車産業でも起こるだろうと考えました。100年続いたガソリンエンジンが、電池に置き換わるという大きな変化が必ず起こる。そこにチャンスがあるはずだと。

金丸:ですが当然、既存のメーカーもEV事業に乗り出しますよね。

徳重:テラモーターズを立ち上げたときも「ホンダ、ヤマハとどう戦っていくんだ。勝てるわけがない」と何度も言われました。でも、大手がやっているから、うちはやらない、というメンタリティでいる限り、日本からイノベーションは生まれないと思うんです。シリコンバレーで5年過ごし、今アジアでビジネスをしていて感じるのは、日本人って真面目すぎるんですよ。無理だなと思うことは、すぐ選択肢から外して考えようとしない。ですが、「無茶だ、無謀だ」と思うことこそ本気で考えないと、イノベーションは生まれるものではありません。

金丸:同感です。

徳重:金丸さんも何度も質問されたと思いますが、とくに大企業の方から「どうすればイノベーションが起こせるのか教えてほしい」とよく聞かれます。その答えは、無茶なこと、無謀なことに本気で挑戦する、以外にありません。

金丸:徳重社長はまさに、その考えを実践されていますよね。異分野であるEVの世界に自ら飛び込んで行かれた。それこそ、事業が軌道に乗るまでには、大変なご苦労があったんじゃないんですか?

徳重:そうですね。まずは製品を作らないと話にならないので、知り合いのつてを頼りに、優秀なエンジニアに一人ずつ声をかけていきました。

金丸:地道に攻めていったのですね。

徳重:勝つためにどういう要素が必要か、どんな人材が必要かを分析し、うまく人材を集めることが、成功の絶対条件だと思います。必ずしも経験は必要だとは思いません。むしろ業界の常識がないおかげで、ゼロベースで新しいアイデアを生み出すことができますから。

金丸:業界の慣習にとらわれなかったことが、テラモーターズの成長の秘訣なのかもしれません。今後の事業展開について教えていただけますか?

徳重:主要マーケットであるバングラデシュ、ベトナム、インドの3ヵ国で、今以上のシェアを取っていきたいですね。

金丸:どの国も人口が多いし、平均年齢も若い。可能性は無限ですね。

徳重:私たちが最もこだわっているのは、その市場に合う製品をつくることなんです。企業側が良いと思うものを作る「プロダクトアウト」と、顧客が求めるものを作る「マーケットイン」という考え方がありますが、新興国のボリュームゾーンは、間違いなくマーケットイン。最初こそ手探りでしたが、徹底して顧客の声を聞き、3回ぐらい改良を重ねて、各市場で〝売れる製品〞に仕上げていきました。創業当時は3億円だった売上げも、今では10倍の30億円までになっています。今後はさらにどう売っていくかが勝負です。

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