2016.09.16
若くして大手商社の執行役員となった花田誠一(41歳)。端から見れば華麗で迷いのない人生を送っている。だが、エグゼクティブならではの大きな重圧とプレッシャーに悩む日も当然ある。
新たなステージへの扉を前に、苦悩の日々を送る誠一。
これは、彼が解決の糸口を掴むきっかけとなったプレミアムな週末の物語である。
昇進後初の大プロジェクトが暗礁に乗り上げてしまい……
―八方ふさがりか……―
大手商社で執行役員を務める誠一は、ある問題で頭を抱えていた。東南アジア全域での天然ガス開発プロジェクト。その成否は誠一の肩にかかっている。だが、タイトなスケジュールに、プロジェクトメンバーが日に日に疲弊していく姿を目の当たりにして、誠一は焦りが隠せなくなってきていた。
41歳という若さで、同期や先輩を差し置いて執行役員となった誠一は、入社以来とにかく猛烈に仕事をしてきた。
学生時代にラグビーで鍛えた身体と精神力を武器に、仕事と社内の人間関係の荒波も乗りこなしてきた。だから今回のプロジェクトに陰りが見えてきた時も、メンバーたちをひたすら鼓舞した。
だが、いくら誠一が彼らを奮い立たせようとしても、状況が上向くことはなくプロジェクトはついに止まってしまった。
―ここまでなのか。いや、何か解決策があるはずだ……―
解決の糸口が見えないまま、誠一は深く落ち込み、疲弊しきっていた。そんな彼を見かねて、恋人の真理(32歳)がこんな提案をしてきた。
「ドライブがてら千葉まで行って、ゴルフで汗を流せば少しはすっきりするんじゃない?せっかくクルマも買い替えたんだし。」
彼女はいつもこうして励ましてくれる。なかなか踏ん切りのつかない誠一を、なかば強引に連れ出したり、強制的にONとOFFを切り替えてくれるのだ。
真理とは付き合って2年になり、来年には結婚を控えている。外資系証券会社でバリバリ仕事をこなす彼女は、細かな気遣いができる女性だ。さらに彼女は、全身から溢れる知性を漂わせている。
どこがと聞かれてもうまく答えられないが、だからこそ“知性”という曖昧なものを、こんなに感じさせる真理は特別なのだ。そこに誠一が惚れこんで付き合い始めた。真理を紹介してくれた大学の同期・ヒロキには本当に感謝している。
「じゃあ、決まりね!新しいウェアも買っちゃおっかな」
誠一が返事をする前に、ゴルフに行くことが決まった。真理はすでにご機嫌だ。
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