こじらせマン Vol.1

こじらせマン:高スペックな敏腕プロデューサーのエキセントリックな結婚条件とは!?

「僕、結婚できないんじゃなくて、(※絶対好きな人としか)しないんです」


チャラ男ぶっているが意外に亮太は硬派な部分がある。デートを重ねた女性と関係を持つことはもちろんあるが、ちゃんと好きになれない女性とは絶対に付き合わない。そういった背景には亮太がずっと引きづっている過去の恋、7年付き合った元カノの香織の存在がある。

香織は5個下の東コレブランドのデザイナーで非常に優秀な女性だった。正直美人と呼ばれるタイプではなかったが、何よりも気が合ったし、亮太は彼女のことを心底尊敬していた。


しかし交際してから5年が過ぎた頃、お互い仕事が多忙を極め、最終的には自然消滅してしまう。亮太は香織に今でも未練があるし、彼女を想っていたときと同じくらい相手を好きになれない限り、彼女は作らないと決めている。

「おモテになるのは大いに結構ですけど、結婚は? このまま一生独身でいいの?」

「う~ん、それは難しい質問だ…。それでいうと答えは『今は、わからない』だな。俺は本当に好きだって思える人と結婚したいだけなんだよ。世間体とか年齢とかそういうんじゃなくて、この人なら一生愛し抜けるって誓える人を探し求めてるんだ。もしみつかんなかったらそれはそれで仕方ないかな。」

ハイボールを2、3杯おかわりした亮太は、少々酔いが回ってきたようだ。

「最近のドラマあったじゃん。『私、結婚できないんじゃなくて、しないんです』。あれさ、『しないんです』の前に(※絶対好きな人としか)って注釈入れるべきだよね。こじらせを馬鹿にしてる奴らはみんな、そこらへんわかってないんだよな~。自分の人生妥協したくないって思ってるだけなのにさ。」

なんだか夢見がちで独りよがりな自論にも聞こえるが、彼の主張によって絵美里はあることに気づかされる。

“こじらせ男子”と聞くとどうしても“自分に自信がなくて結婚できない男性”をイメージしがちだが、必ずしもそうではなく、亮太のように自信家で、婚活市場において十分に需要があるにも関わらず、結婚に辿りつけない男性も存在するということだ。こじらせ男子の生態は非常に複雑であり、また多種多様である。

亮太は社会人になってすぐ、大井町に一戸建てをローンで購入した。実家の両親をその家に迎え入れて現在は家族3人で住んでいる。そのことを聞かされたとき、絵美里は随分と「親孝行だな。」と亮太を見直した記憶がある。彼には毎日「行ってらっしゃい。」「お疲れさま。」と声を掛けてくれる家族がいる。“寂しくない”という言葉は嘘ではないのかもしれない。

「その“絶対好きな人”って一体どんな人よ?」

「それはやっぱりリスペクトできる女性でしょ。『ここがすごい!』って思える部分があったらいいよね。あとファッションは譲れないな。服の話で盛り上がりたいし。俺さ、いつか白馬に載った王女様が現れるって信じてるんだ。それまでは絶対結婚しない!」

「何言ってるんだか…。ちなみにその王女様は真っ白なレオタード着てるの?」

「いや、俺の王女様は白Tとデニムをめちゃくちゃカッコよく着こなしているんだ。足元はヴァレンティノのピンヒール履いてさ。カジュアルなのにセクシー、みたいな!」

亮太の妄想トークを聞くのがそろそろ面倒臭くなった絵美里は「トイレ!」と叫んで席を立つ。確かに亮太は紛れもなく“こじらせマン”だ。だが、亮太の結婚への道のりは平坦ではないと思うが、決して閉ざされたわけではない。自分から好きにならないと恋愛がうまく行かないことを自分で理解している分、彼にはまだ救いがある。

亮太のこじらせを解析するならば、「こじらせている≒こだわりが強すぎる」といったところだろうか。

「いつか現れるかもしれないその王女様も、どうか亮太のことを気に入りますように。」

絵美里はそう願わずにはいられなかった。


<“こじらせレベル”:10のチェックシート>

1.恋愛願望   ★★★★★ 恋は常にしていたいタイプ。ただなかなかビビッとこない。

2.恋愛経験値  ★★★★☆ 付き合った人数は少ない方。但しデートでのエスコートは得意分野。

3.結婚願望   ★★★☆☆ 「いつかたった一人の人と…。」と夢見がち。

4.社交性    ★★★★★  業界で培ったコミュニケーション能力でどんな人とも打ち解ける。

5.精神力    ★★★☆☆  厳しい職場環境によって鍛え上げられた鋼のハートを持つ。恋愛に対する精神力は未知数。

6.こじらせ自覚度★★★★☆ 自分のダメな部分を思いのほか素直に認め、受け入れている。

7.理想が高い度 ★★★☆☆ ストライクゾーンは狭めだが、理想が高いわけではない。

8.ナルシスト度 ★★★★★ とにかく自分に自信がある。褒められると素直に喜ぶタイプ。

9.卑屈度    ☆☆☆☆☆ 「俺なんて…。」と思ったことはおそらく今まで一度もない。

10.心の広さ   ★★☆☆☆ 基本的に誰にでも優しいが、見返りを求める場合もある。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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