シティマナーなリラックスしたスーツスタイル。
取材時はちょうどNYから帰国したところだった山本祐平さん。テーラー『ケイド』は近年海外に招聘されオーダー会を行うことも多く、山本さんはワールドワイドな「アメリカンスタイル」の伝道師となりつつある。そんな彼が着こなしの上で重要と考えるのは「シティーマナー」であること。
アイビースタイルをリラックスして着る、力の抜けたスタイルこそシティーマナーの要諦。そして夏の服地として、シアサッカーやダークなマドラスチェックを挙げる。
この着こなしは、山本さん所有のニューヨークに関する古い本がベース。本には次のような記述がある。
「その男は、ブルックス・ブラザース製の白っぽい縞入りの夏服に、グリーン地に白玉の、いわゆるポルカ・ドットの蝶ネクタイをしめていた」。
まだシアサッカーの呼称など浸透していなかった頃の表現は、不思議と新鮮な響きがある。それは山本さんの、不易な、それでいていつもフレッシュな着こなしに通じるようだ。
Yuhei Yamamoto
Tailor
山本祐平 『Caid(ケイド)』代表。アメリカンなテーラードスタイルを追求し、具現化するテーラー。「平凡なものを、丁寧につくる」という哲学に賛同する輪は、日本のみならず米国やアジア圏にも広がっている。
現代的なバランスとクラシックな佇まい。
「普段から何かあって街へ出るときには、スーツを着ることが多いんです」。
このように語るのは、イラストレーターのソリマチアキラさん。この夏に着たい、ちょっとクラシックなスタイルとしてピックアップしたのは、スーツからシャツそしてブレイシーズまで「麻素材」の総リネンスタイル。
「去年ネイビーの麻のジャケットを誂えて以来、夏は麻を着たくなって。新たに麻らしいクリーム色のスーツを誂えました」。
3パッチポケットの麻のスーツは『バタク ハウスカット』のスタイルドビスポーク。
「1930年代から60年代ぐらいまでの、英国やヨーロッパの雰囲気が落ち着くんです。でも、そのスタイルをコスプレ的に着たくはない。オーダーメイドで仕立てることで、現代風にしています」。
トラウザーズの裾幅などはそれほど太くなく、現代の目から見ても普通のバランス。他のアイテムも現代の物が主だが、その佇まいは実にクラシック。クラシック=単に古い、ではないのだ。
Akira Sorimachi
Illustrator
ソリマチアキラ 『Men’s Precious』や『Men’s EX』といった男性誌でのスタイリッシュなイラスト、または広告のコミカルなキャラクターなどで知られるイラストレーター。どこかレトロスペクティヴな味わいの画風にファンが多い。
リラックスして落ち着くスーツの装い。
「休みの日でも、スーツを着ることが多いですね。コンサートや美術館に行くときはスーツが多いです。落ち着くというか、便利でもある。年相応ということもあるかもしれません」。そう語るのはBEAMS のファッションディレクターである尹勝浩さん。
この日はビームスでオーダーした、ブラウンカラーのウールサッカー地のダブルのスリーピースに、『ボルゾネッラ』の柄が鮮やかなシャツ、そしてグリーンのニットタイを合わせた。
「マリの写真家、セイドゥ・ケイタの写真の感じでしょうか。ブラウンのスーツは最近のアフリカへの関心を反映しています」。
写真集『サプール』以降イタリアなどで注目されているアフリカンテイストを、尹さんは独自のカルチュラルな見識をもって、自身の装いに落とし込んでいる。
「茶色のスーツにはまた、ジョークの意も含まれますね」と笑う尹さん。スーツが落ち着くという言葉の背後には、常識を覆す鋭敏かつパンクな感性がある。
Katsuhiro Inn
BEAMS Fashion Director
尹 勝浩 学生時代からビームスで働き、ショップマネージャー&バイヤー、商品企画を歴任。現在は「ビームス 銀座」でショップスタッフを務めるかたわら、自身の持つ豊富な知識と経験を活かしメディアへの寄稿や講演も行う。