東京いい街、やれる部屋2 Vol.3

東京いい街、やれる部屋2:三日間付き合った、西麻布の寂しがりやおじさん

出版社で営業事務をこなす主人公・彩乃(27)には悩みがあった。それは恋愛に対していまいち本気になれず、男性との距離を図ってしまうこと。

友人・真美からの「男性の部屋行こう」という提案に乗り、3ヶ月限定で気になる人には踏み込んでみようと決める。

目黒のデザイナーズマンションに住む義実参宮橋で少女漫画のような展開を起こす巧と出会ったがいまいちどれもピンと来るものがない。今回は西麻布に住む飲食店経営者のようだが……?

ファザコンなら、父親くらいと付き合えば?


巧とのことがあった週明けの月曜日。どうしても飲みに行きたい気分になり、友人を誘ったが全滅。誰もいないならと行きつけの六本木にある『ミントリーフ モヒートバー』へひとり足を運んだ。彩乃の話を先ほどから聞いてくれているのは、このバーで働く幼なじみの和也。ここへはいつも和也と会うために足を運んでいる。

「彩乃はファザコンなんだからもっと年上がいいんじゃない?」

自分をよく理解しているだけあって、和也のアドバイスはいつも的確。確かに彩乃は幼いころ両親が離婚し、母親に引き取られたこともあって父親の愛情に飢えているところがある。お食事会でも3つ上くらいの男性より、ひと回り以上離れている人と話している方が落ち着く。結婚するとしても父くらい離れている方が上手くいくような気がしていた。

しかし、お食事会で出会う人は既婚者が多い。隠していてもアイロンのかかったハンカチに、シワひとつないシャツ。どっしりとした安定感は、奥様の後ろ盾によって見えている魅力というのを十分理解している。不倫を否定するつもりはないが、リスクを背負ってでも付き合いたいと思う人にはまだ出会ったことがない。

バツイチには抵抗がないが、彩乃と同い年の友人でそういった知り合いを知っている人はなかなか少ないだろう。結局は義実、巧くらいの3~5歳上の男性に腰を下ろしてしまうのだ。そんなことを和也と話しながら考えていると、一人の客が入ってきた。

江口洋介似なら50、80喜んで?


「彩乃、この人はうちの常連さんで“誠”さんだよ」

こっちは俺の幼なじみなんです、と挨拶をかわしせっかくだからと誠を彩乃の隣に座らせた。「おじさんが隣でごめんね」と謝ってくるが、“おっさん”を感じさせない誠に不快感などなかった。白いシャツにデニムを合わせた清潔感のある服装。この年齢になれば頭皮が気になるころだが、別にヅラでも生え際が危ないわけでもない。

見た目は江口洋介にどことなく似ている。「そういえば江口洋介はもう48歳だもんなぁ」と考えるとその年齢に抵抗もない。むしろ保険会社のCMではないが50、80喜んで、である。今日がはじめましてということもあり、お互いお見合いのような年齢は?趣味は?といった質問をかわし、誠のことがいくつかわかった。

誠は50歳でバツイチ。奥さんとは5年前に離婚し、いま25歳になる息子さんがいる。西麻布のマンションで暮らしており、仕事は飲食店経営。扱っている店を聞けば、どれも雑誌で話題の人気店ばかりだった。そして趣味はサーフィンで、週に一度は茨城県の大洗まで足を運んでいるという。彩乃の祖父母が茨城で暮らしているため、彼女にとっては第二の故郷。そこを知っている人に出会えるのはなんだか少し嬉しい。

そしてなによりも彩乃を喜ばせたのは彼の名前だった。

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