
男は還暦から:なぜ、今、60歳以降がモテるのか…完全に説明する
<ジェロントナンバー1/村上 実>
村上実氏(65)
・株式会社オータパブリケーションズ 専務取締役 経営調査室長
・大塚女子大学マネジメントアカデミー講師
・慶應義塾大学大学客員講師
あれは忘れもしない、2005年のこと。
『コンラッド東京』開業に合わせたレセプションがあり、出版社でバイトしていた大学4年生の私は先輩と一緒に馳せ参じました。
ホテルの全精力を傾けたおもてなしだけあって何もかもが煌びやかで美しく、当時新発売だったソニーのサイバーショット“DSC-W7”を手に、私は会場の写真でジグソーパズルでも作るのかと問いたくなるほど、会場内の写真を撮影していました。
そこへ突然「そのハイヒールは、お母さんから借りてきたものかい? 歩き方が、おかしいなあ」との声。振り向くとそこにいたのが、こちらの村上 実氏、通称ミッキー。
確かに私のヒールは13センチで、首は鳩のように、腰つきはニワトリ、そして歩き方は疲れ切ったロバのようだったことでしょう。
そのとき私は彼が世界中のホテルを取材してきた著名なホテルジャーナリストだとは知らず「違いますけど。じゃあ、おじさん、歩き方を教えてください」と返したことで、その場が即席ウォーキングクラス。
「なんのデモンストレーション?」とレセプションにきてハイになっている女性たちも集い、村上氏はいよいよ得意満面で、ドヤさドヤさ。
それから11年、私の歩き方は、まだロバです。
閑話休題。
そもそも、こちらの連載はover還暦に話を聞いてかっこいい男になろう、という趣旨。
武勇伝や、ダンディズム、男として許せないふるまい、年齢を重ねていくことに対しての想い、そんなことを聞いていきたいと思っています。そう伝えると、
「あ、お疲れ様です。ズボン脱ぎましょうか?」
のっけからくるよね。
「僕なんか、どうみてもインチキでしょう。」とニコニコ。村上氏は、最初に人の顔の前で大きくバーンと手を叩いて、人がびっくりして目を白黒している間に煙に巻くのが得意の話法を使います。相撲でいういわゆる「猫だまし」と言われる戦法で、“白鵬”や“暗殺教室”でも有名ですね。
インチキ、ハッタリかますのは、大事ですかね、やっぱり。SNSでリア充を気取るとか、そうまでしないと世間から認められないのでしょうか?
「リア獣? リアルな獣はいいかもしれないね。
そりゃあね、君、最初はなんでも質より量ですよ。たくさんのハッタリや嘘をついて、たくさんの女を愛し、量をこなして質が上がっていくと上質になるんです。
さて、質を上げるにはどうしたらいいか。それはね、お互いの唾が届く範囲で、生身の人間とどれだけ多く話したか、これが質を上げる近道です。質が上がると、量がこなせなくても上質になるから。
そうすれば世の中も評価してくれるようになるし、自分自身の満足度も高くなる。周囲が評価してくれれば自分も満足するんだけど、それ以上に、周囲の評価がなくても自分自身の満足度とその質も高くなっていくんです」
そう言って「世の中には、バカからカバまでたくさんいるからね」、と不敵な笑みを浮かべながらギネスの黒ビールを飲み干します。「彼女にジンリッキーのお代わりをバケツ一杯、僕にもう一杯、グラスでギネスを」
バーテンダーにそう言いながら、最近300いいね!を獲得したFacebookの投稿を自慢しています。ひとしきり自慢し終わると、私に向き直りこう言ったのです。
「僕には、選択する権利も、選択される権利もない」
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