東京結婚式明細 Vol.1

東京結婚式明細:主役は義母!?玉の輿の高すぎた代償

女は男の選択で変わってしまう。義母に侵された哀れな花嫁


あれだけ派手な披露宴の後、なんと二次会は開催されなかった。さすが義母主催だけある。

私は最後にどうしても千里と話がしたく、見送りをする新郎新婦の近くで、それが終わるまで物陰で待機していた。プチギフトの小さなお菓子を客たち手渡し続ける千里は、明らかに疲れた表情をしており、もうそれを隠そうともしていない。

最後の一組である酔った男たちが新郎とふざけ合っているのを見計らい、私は千里に近づいた。気づいた彼女は儚げな笑顔を浮かべる。薬指に光る巨大なダイヤに消し去られそうな、か弱い笑顔。

「沙織は相変わらず結婚生活も仕事も順調なんでしょう? 幸せな人は表情で分かるね。30もだいぶ過ぎて、派手な結婚式開くのも恥ずかしかったんだけど、彼の家族がね……。今日は来てくれて本当にありがとう」

頭のいい彼女は、当然ともいえるが、この結婚式が列席者にどんな印象を与えるかきっと最初から分かっていたのだろう。その上で旦那の家族の言われるままに、贅を尽くした趣味の悪い結婚式を挙げたのだった。

しかし同情する一方で、若干の苛立ちも覚えた。一応こちらは、花嫁の幸せを祝う気持ちで張り切って出席したのだ。嘘でもいいから、今日くらいもっと開き直り、玉の輿に乗った嫁として強気にふんぞり返っていれば良かったではないか。金しか取柄のない男の、金の魅力を存分に感じていればいいではないか。

女は、男の選択ひとつでこれだけ変わってしまうものなのか。千里はすでに仕事を辞め、主婦業に専念すると言っていた。どうしてあんな家に嫁ぐのかは分からなかったし、もちろん聞くことはできなかった。

帰り道、20代の千里を想った。可憐な妖精のように、いつもフワフワとした笑顔を浮かべていた彼女を。

同じ人妻になったが、きっと千里は私たちのグループには戻らないだろう。実は、疎遠になっていた千里とまた昔のような仲間に戻れるかもしれない、と淡い期待を抱いていた。

後から聞いた話だが、千里はもともと結婚願望が強かったが、今の夫の前は遊び人の既婚者に引っかかり散々振り回されていたらしい。あの妖怪男は、そんな彼女の30過ぎの傷心にまんまと取り入ったのだ。しかし、それはそれで別に悪くはない話だと思う。

しかし、女は誰だって、きっと皆に祝福され、羨ましがられるような結婚がしたいのだと思う。

次に千里に会えるのは誰の結婚式だろうと、私は引出物で貰った巨大な中華鍋を使うたびに千里を思い出す。

あのときは重たい中華鍋を引出物にする神経を疑ったが、意外にもかなり使い勝手がよかった。料理が大好きな私は、この中華鍋だけは誰の引出物よりも重宝している。


【今日の推定結婚式明細】(最高5つ星)
総額:¥12,089,000

以下明細
ドレス:1,750,000円(★)
飲食代単価:7,000,000円=客単価¥35,000×200人(★★★★)
ウエディングケーキ:50,000円(★★★)
装花:300,000円(★★)
引出物:1,100,000円=客単価5,500円×200人 (★★★)
写真・映像:580,000円(★)
司会:80,000円(★★★)
会場(挙式料、室料、会場装飾・演出、音響照明、ペーパーアイテム、介添え料、お色直し美容費、メイク・ヘアリハーサル含む):1,229,000円(★)
余興:(★)
センス:(★)

【指輪】
婚約指輪:5,000,000円(★★★★★)
結婚指輪:1,080,000円(★★★★★)

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
朋子さん、いくら高価な靴でも結婚式に殺生を連想させるクロコダイルのヒールはダメでしょう。
バリキャリだったらそこまで気を配らないと。
2017/09/18 22:3537
No Name
このライターさんもう今はいらっしゃらないですね。とても面白いし文章も秀麗です
2019/07/11 08:407
No Name
思わず「呪われた家」の沙織、宗次郎、宗次郎の母の千鶴子を連想してしまいました 😨
2019/11/14 11:296返信1件
もっと見る ( 5 件 )

【東京結婚式明細】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo