文具の品格 Vol.7

文具の品格:誰でも3分で美文字になれる美文字テク!

前回までのあらすじ

“ホンモノ”の都会のオトコへの第一歩を踏み出すため、「ブルーアワー」という高級万年筆(17万6000円) を一括払いで購入したデキ男営業マン・森裕哉(もり ひろや)。

「書く文字はテクニックを覚えるだけで、ある程度は印象をよくできる」との考えのもと、後藤に押される形で、美文字教室の体験レッスンを受けることになった――。

第6話:文具の品格:知ってた!? 東京の新たな出会いスポットは、美文字教室です!

青山で評判の「美文字」教室

文字見本提供:my MOJI  萩原季実子講師

「――余談にはなりますが、海外なのに52円切手でハガキを送れる地域はどこだか知っていますか? ……正解は、南極です」

参加者から軽い驚きの声があがる。夏目漱石、坂本龍馬、アインシュタインなど――。「美文字教室」の講師は、時代を創ってきた偉人達が手書きの手紙でいかに人の心を動かしてきたかについて解説したうえで、手書きの文字が与える印象について解説していた。


土曜日の昼下がり。裕哉は、青山のとあるペン字教室の体験レッスンを受講していた。「手ぶらで気軽に行けて上達する」「可愛い子が来る」と評判の教室である。会場は青山通りの路地を1本入ったところにある小洒落た貸し会議室で、入口近くにある広々としたテラスと白を基調とした清潔な内装が印象的であった。いかにも、女性が好みそうな会場である。


参加者は裕哉を入れて5人の少人数制ということもあって、和やかで和気あいあいとした雰囲気で進む。

初めに軽く自己紹介をするように促され、裕哉は改めて教室を見渡した。女は「お母さんにクセ字を注意される」と悩む学習院女子の大学生、「自分磨きがしたい」と語ったメガバンの一般職OL、「手紙を書く機会がとても多い」とのたまうマダムの3人。男は「取引先に綺麗な字でお礼状を書きたい」と意気込んでいた、50代くらいで地味な見た目の会社員のみであったので、裕哉は少し安心した。

美文字を書くには道具選びから

それから講師から全員にペンが配られ、裕哉はすかさずチェックをする。パイロットの『G-3 0.5mm』であった。なめらかな書き心地と、手にしっかりと馴染むラバーグリップが特徴的で、裕哉はすぐに気に入った。裕哉は講師に、なぜこのペンを選んだのか質問をする。

「森さん、いい質問ですね。実は油性よりもゲルのボールペンの方が、かすれにくく均一な線が書けるので、文字が上手に見えるんです。また水性だと乾くのに時間がかかりますし裏写りもしやすいので、ゲルをおすすめします。私も同じものを使っていますよ」

講師が赤インクの『G-3』を持った自分の右手を掲げる。参加者からはおお、という感嘆の声があがった。


「美しい字を書くうえで、道具選びも意外と重要になってきます。――みなさん、目の前にある便箋をめくってみてください」

裕哉は試し書き用の便箋をめくると、透明の下敷きが見えた。触ってみると、ソフトなタイプのものだとわかる。女子大生の清水美紀が「小学生の時に使っていた」と興奮していた。

「硬筆用のソフト下敷きは、一画一画丁寧に、しっかりと力を入れて書けるのでおすすめですよ。硬い机や下敷きの上で書くと、場合によってはペン先が滑ってしまいます」

さっそく試し書きしてみた裕哉は、なるほど書きやすい、と思う。隣に座るOLの松田晴子も同じことを考えていたようで、目が合い、笑いかけられた。

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