幸せな離婚 written by 内埜さくら Vol.2

幸せな離婚:夫からの相談を手放しで受け入れられない理由。それは……。

恭子は竜也から「金を貸してほしい。」と打診されたとき、即答できなかった自分を恥じていた。

映画プロデューサーに求められる能力は大きく4つに分けられる。どんな原作を選んでどう脚本の骨組みを作るかという「企画力と脚本力」、「監督と俳優のキャスティング力」、「制作管理力と資金収集力」、そして「宣伝力」である。

ただし、この4つ全てを自分ひとりで行う必要はなく、このうち2つほどを武器にできればプロデューサーとして勝負できるといわれている。
だが、どの能力を武器にするにも、必要とされるのはリーダーシップと決断力である。

その力を備えているからこそフリーとして生き延びているはずなのに、夫婦の問題になった途端、そのどちらも発揮できなかった――プライベートだと女の部分がむき出しになり、金銭問題なのに即決できなかった自分に忸怩たる思いを抱えたのだった。

「申し訳ないけどわたし、あなたにお金は貸せない」

だから夏子と真実と会った翌日の夜、きっぱりと断った。

映画プロデューサー、特にフリーは収益を出して初めて評価される仕事であるため、制作中の金銭管理にも自然と厳しくなる。そのシビアな環境をいくつも経験した身から見ると、竜也の申し出は脇が甘すぎると感じたからだ。

そもそも会社を設立するというのに、資金を自分で貯めずに借りてスタートさせる点に共感できない。自分がそれまで貯めてきた貯蓄で事務所を借りたことを竜也も知っているはずである。

そう告げると、竜也は突然、土下座した。

「頼む! もう一度話を聞いてくれ」

恭子はもうこれ以上、竜也のみっともない姿を見たくなかった。

「やめてよ。とにかく顔を上げて。……話は聞くから」

すると、ほっとした顔で竜也が事情を説明し始めた。

次回:4.23土曜 更新予定

文/内埜さくら

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