幸せな離婚 written by 内埜さくら Vol.2

幸せな離婚:夫からの相談を手放しで受け入れられない理由。それは……。

初めて会ったときにしていた結婚指輪を外している恭子を見ても、なにも聞こうとしないふたりはどう判断するだろう。そんな思いがふとよぎる。

――でも、やっぱり言えない。

 口からこぼれそうになる愚痴を恭子はすんでのところで飲み込んだ。ふたりを信頼していないからではない。

相談できない理由――それは、今回の件を打ち明ければ、たとえ夫婦でも血のつながらない他人である竜也の恥を晒すようなものだからである。

自分が他人を貶める行為はしたくない。それに、夫婦は一心同体だからと同一視されるのも嫌だった。

借金をしたことがない恭子は、金銭面だけは竜也と同じように見られたくない。だから、すでに編集プロダクションのシステムは竜也から聞いていたが、別の角度から質問をしてみることにした。

「夏子は編集プロダクションから仕事をもらったことってある?」

じゃがいものラクレットがけを美味しそうに咀嚼し終えた夏子が「編プロ? もちろんあるよ。でもお世話になったのは新人の頃。今は編プロとはほとんど仕事をしないなあ。出版社との直の取引をできるだけ優先しているし、直で取引ができるように努力してる。」と答えた。

「じゃあ、編プロから仕事をもらうライターさんの中には、実力不足で仕事がなくて困ってる人もいるってこと?」

恭子の質問に夏子が苦笑いする。

「わたしが新人の頃お世話になったって言ったでしょ。ある意味編プロは、そういう人材を育てるっていう機能もあるってことよ」

――ふたりで始める小さな会社に人を育てる余力はないはずだわ……。

竜也に金を貸すのか貸さないのか。恭子の決意は固まった。

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