
その名はサエコ:「自分の実力値」をわかっている女は、この日本にどれほどいる?
サエコが捨てられるのも時間の問題...?
—今から、会える?—
金曜日の夜21:00。地方局女子アナのアンの元へLINEが届いた。
山梨放送のアナウンサーとしてなかなか多忙な生活を送っているアンだが、週末は都内の実家に戻ることが多い。
LINEは件の男からだった。
アンは唇の隙間から思わず笑い声が漏れる。
サエコの恋人・大富豪との一夜を過ごしたアンは、”その夜”に確かな手応えを感じてはいたものの、一度関係を持ったが最後そのままフェードアウトしてしまう男が世の中にいることは勿論年頃の女として心得ていた。
都合のいい女と成り下がる可能性を孕んでいることも理解していたアンにとって、その夜は、幾ばくかのリスクと隣り合わせの勝負でもあったわけだが、その不安を返上するためにも、アンが持ちうる全ての経験と、技巧と、男性を悦ばせる恥じらいを携えて臨んでいた。
男からのオファーが来たことで、改めてその夜のデキに花丸をもらったような心地がして満足げに微笑む。
ベッドの上での男の反応は、女としての自尊心を満たす。昼間どんなに美しい女でも、夜に綻びがあれば、女としての価値は半減してしまう。聖子が言っていた通り、サエコは男をつかむ技術はピカイチでも、逃さないテクニックはイマイチなのかもしれない。
そんなサエコの稚拙でお粗末な夜のことを考えると今から会う男の不遇に同情せずにいられないが、そんな心地に反して、笑いが止まらない。アンは、シャネルのCHANCEのボディクリームをたっぷりと肌に塗り込んで鏡の前でにっこりと微笑む。
—サエコが捨てられるのも時間の問題ね。—
鏡には、妖しいほどに美しい女が映っていた。
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