男と女の東京ミステリー Vol.13

大手メーカー勤務の29歳男とキャンプへ。帰り道に起こった意外すぎるトラブルとは?

人の心は単純ではない。

たとえ友情や恋愛感情によって結ばれている相手でも、時に意見は食い違い、衝突が起きる。

軋轢や確執のなかで、感情は歪められ、別の形を成していく――。

これは、複雑怪奇な人間心理が生み出した、ミステリアスな物語。

▶前回:久々の同窓会で撮った記念写真。そこに映り込んでいた“あるモノ”に血の気が引き…


資格マニア【前編】


「ねえ、ひとりで飲んでないでさ。あっちでみんなと話そうよ」

ハイブランドのジャケットを着た男が、馴れ馴れしく声をかけてきた。

ニコッと微笑み、言葉は交わさず会釈だけして里帆は彼の前を通り過ぎた。

― ああいう人は、タイプじゃないんだよな…。

手に持ったワイングラスを口もとに運び、「ふぅ」と小さくため息をつく。

今日は、「異業種交流会」という名目の飲み会のため、タワマンのパーティールームを訪れていた。

大手損害保険会社に勤める里帆は、先日友人の開催する飲み会に参加した際に同業者の男性と知り合い、今回の誘いを受けたのだ。

窓の外に湾岸エリアの夜景の広がる空間に、友人が友人を呼んで集まった15人ほどの男女がいくつかのグループを作り、思い思いの場所で談笑している。

里帆はなんとなく雰囲気に馴染めず、料理や飲み物が並べられた中央のテーブルの傍らでたたずんでいた。

すると「あの…」と再び声をかけられる。

振り返ると、さっきとは違う男が立っている。

「よかったら、少しお話しませんか…?」

恐縮しながら尋ねる男は、大柄で短髪。柔道でもやっていそうな、純朴さがにじみ出た風貌をしていた。

洗練されているとは言い難く、場の雰囲気に溶け込めていない様子だが、実はそれが里帆の好みのタイプだった。

― そう!こういう人がいいの!

里帆は意識的に何度か視線を送っていたから、男も気になって反応したようだった。

2人は揃って近くのソファに腰をおろす。

男は、『吉木亮平』と名乗った。里帆と同い年の29歳。大手ゲームメーカーで営業を担当しているという。

「吉木さんは、何かスポーツをされてるんですか?体を鍛えてるとか」

ジャケットの上からでも、筋肉が隆起しているのがわかる。

「そうですね。スポーツジムに通っています。一応、資格も持っていて…」

「インストラクターとか?」

「はい。ほかにもいくつか。実は僕、資格を集めるのが好きで…」

嬉しそうに語る亮平を、里帆は微笑ましく眺めた。

この記事へのコメント

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No Name
車の免許持ってないなら、貴久にお願いされた時に言わなきゃ!!頷いたから運転してくれるものだと思って皆ワイン飲み始めちゃったよね。
2023/10/12 05:1959返信3件
No Name
富士五湖のどこかでキャンプして、帰りの青木ヶ原樹海に迷い込んでしまったミステリーかと期待したら、全然違いましたわ。
どうでもいい資格を50個持ってるより、普通自動車免許を持ってて欲しいよ。笑
2023/10/12 05:3145
No Name
無意味な資格ばかり集めて自慢して喜んでる人、たまにいるね。
2023/10/12 05:2244返信3件
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