文具の品格 Vol.4

文具の品格:可愛いカフェ店員は必ず“アレ”を使っている!

“ホンモノ”の都会のオトコへの第一歩を踏み出すため、「ブルーアワー」という高級万年筆(17万6000円)を一括払いで購入したデキ男営業マン・森裕哉(もり ひろや)。

ホワイトデーに「手軽なボールペン派」の後輩・愛子から変わったアプローチを受けた裕哉に、愛子への嫉妬を覚えた美人先輩社員・千佳が急接近する。

第3話:文具の品格:男の持つペンでプロファイリングを始める怖い女たち

「ノー残業デー」が掲げられている、水曜日の夜。裕哉はこの日、丸善の丸の内本店に来ていた。安物のボールペンを使っているという理由で、裕哉を「仕事できなそう」と噂した―あの千佳と2人で、である。

2人きりのプレゼント選び

本当に、自分のことを見直してくれたのか。いや、ひょっとしたら、からかわれているのかもしれない。

答えの出ない問いが、裕哉の頭に幾度か浮かんでは、消える。その度に、裕哉の胸は小さく痛んだ。だがそんな裕哉を、高級万年筆「ブルーアワー」が、スーツの左の内ポケットから支えてくれる気がした。だからこそ、裕哉はこんな状況でも背筋を伸ばし、堂々と振る舞うことができた。

《もうすぐ、主任の送別会があるじゃない? 私、女子代表でプレゼント選びを任されているんだけど、何がいいのか全然わからなくて……でも、これまで以上に男らしくて、成績も好調な最近の森さんを見てたら、ペンがいいんじゃないかなって思った。その万年筆、すごく似合ってるよ》

《……もしよかったら、森さん、一緒に選んでくれないかな? いろいろ聞かせてほしいな》

裕哉は、昼休みに交わした千佳との会話を思い返す。喜びと期待、気恥ずかしさ、ばつの悪さ、とまどいなどの様々な感情が交錯し、裕哉の心に渦を巻いていた。

男の務めとプライド

ふと、裕哉の前でガラスケースに夢中になっていた千佳がこちらを振り向くと、目が合った。普段は束ねているミディアムロングの髪が、ふわりと動く。アフター5だからか、今日は髪をおろしていた。

「このペン、どう思う?」
ガラスケースのあるペンを指さしながら、こちらににっこりと笑いかける。遅れて、千佳の髪から甘い香りが漂う。

その笑顔と香りに、裕哉は思わずドキッとしてしまう。千佳の本当の気持ちがどうであれ、今はどうでもいい。頼ってくれた千佳の期待に応えることが、男としての務めである、と思う。

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