斉藤美咲、埼玉県出身の25歳。外資系のジュエリーブランドのPRとして華やかな日々を過ごす。恋にもおしゃれにも手を抜かない、自他ともに認める「キラキラ女子」美咲だったが、“理想の彼氏“である翔太との失恋をきっかけに、大きく自信を喪失してしまう。
見かねて同僚のマキが開いた"お食事会"も大外れ。衝動的に新しい恋を求めるのはやめようと決意する美咲だったが……
第1回:恋愛レシピ:傷心のキラキラ女子、美咲。失恋の特効薬はやっぱり“お食事会”!?
失恋からの、新しい立ち直り方
4月という時期は、人事異動やら昇進やら新しい取引先とのお付き合いやらで、何かと環境が変わる時期だ。環境が変われば、人は新しい出会いを求めて動き出す生き物らしい。美咲の元には、おのずと新たな"お食事会"案件が次々に舞い込んできた。
合コンに出会いは求めないと決めたばかりだったはずが、具体的な案件を目の前に突き付けられると、やはり魅力的に思えてくる。
お誘いに抗うほどの気力もなく、気付けば合コン三昧で平日はほぼ外食という毎日を過ごしていた。
2軒目、3軒目とハシゴするのも珍しくなく、睡眠不足で肌は荒れ、深夜までの飲食がたたって、体重も2キロも増えてしまった。
それをある日、同僚の藤崎マキに指摘されてしまった。同僚とはいえ、社内で一目も二目も置かれる美女ツートップとして君臨するふたりである。お互いのことは当然意識しており、そんなライバルからの突っ込みは許しがたい。
美咲の闘争心に火がついた。そもそも、心も体もたるんだままでは、広報としてのプライドが許さない。その日からというもの、美咲はセルフメンテナンスに没頭することとなった。
まずは、昔から得意だった料理を再開した。栄養バランスを考えて、酵素玄米や、青玄米などをブレンドした炭水化物&高タンパク低脂肪ランチを持参するようになり、飲みに出歩くことも少なくなった。
美容も同じで、肌にも髪にも今までの倍以上の気を遣っている。シートマスクやオイル、ブースターなどその日の肌の感じによって、きちんと丁寧にアイテムを使い分けるようにした。髪についても同様だ。
マキも使っているという衝動買いした例のシャンプーは、使ってみるとそれだけでコンディションに応じた細かなアレンジができることが分かり、今ではすっかり重宝していた。
ミントの香りがするクレンジングシャンプーで地肌をすっきりさせて、仕上げにブースター オイルをトリートメントに混ぜて使うのが美咲のお気に入りのマイレシピだ。
そのブースターオイルは手軽に持ち歩け、昼間のケアにも取り入れた。乾いた髪にも直接使え、終業後までしっとり落ち着くようになった。そして、もう一つ携帯しているのが、血行促進をサポートするとマキに勧められたスカルプエッセンス。これにはすっかりハマってしまった。シュッシュとスプレーして地肌によく揉み込むとキウイとイチジクの香りに包まれる。スーッと気持ちが穏やかになり、仕事中のストレスを即座に撃退してくれるのだ。
料理も美容も、自分の状態によってさまざまなレパートリーを使い分ける。きめ細やかなメンテナンスが、少しずつ美咲を立ち直らせ、2キロ増だった体重は2週間できっちり戻し、肌と髪にも艶が戻った。
セルフケアを怠ってしまったばかりか、自転車操業的に新しい出会いを求め続けることに虚しさすら感じていた合コン三昧の毎日。
でも今は、そんな悪循環に飲み込まれず、きちんと自分をメンテナンスした結果が出てきていると思うと、少し自立した大人の女性に近づいた気がして美咲は嬉しくなった。