
広尾ヒマダム:母からスイスに留学中の娘へのメール。ブルジョアな世界を垣間見よ!
今年も原宿でセント・パトリックデーのパレードがありますよ。小さいあなたをあのパレードに参加させたのは、もう10年以上も前のこと。学校のお友達と緑のお洋服を着て、まるで木の精みたいにかわいかったですね。
でも、小さい頃から学校でフランス語をやっていてよかったですね。理工学部の雰囲気に我慢できなくなっていたあなたには、やっぱりスイスのフィニッシングスクールが向いているんでしょう。
母がスイスにいた頃には複数あったのに、今はスルヴァル・モンフルリともう1校だけなのですね。もう1校のヴィラ・ピエールフーの授業も受けられるから、シャトルバスで行ったり来たりするって本当ですか?
時代も変わりましたね。
コースが終わったら、パリに行くのもいいですね。パリ行くなら、裕也おじさんのアパルトマンを借りるといいわね。
鳩居堂であなたのお名前を入れていただいた便箋も小包に入れましたからね。お名前は書かなくてよいのだから、少しは手間も省けるでしょう? そちらでお世話になった方々には、その都度都度で必ずお礼状を書くこと。
母のお雛さまは今年も美術館に展示されてしまいました。でも、おばあさまが美咲に買ってくれたお雛さまを薫ちゃんに出してもらいましたよ。七段飾りで、あなたが生まれてすぐ、おばあさまが久月に特別にオーダーしてくれたのでしたね。
でも、自分で出すのは大変だから、薫ちゃんがいてくれて助かりますよ。彼女、年が近いから、あなたとお話が合うかと思いましたけど。難しいですね。同じ年代で、片方がその家の娘、片方が家政婦だと、ちょっと複雑なのかしら。
今どきは大学を出てすぐ家政婦になる女の子がいるのですね。でも、お掃除はきっちりやってくれるし、あなたは嫌かも知れないけど、当分薫ちゃんにお願いするつもりでいます。
【解説】
※スルヴァル・モンフルリ
スイスのフィニッシングスクール(花嫁学校)で、通年コースがあるのはここだけ 。
※ヴィラ・ピエールフー
同じくスイスの名門フィニッシングスクール。
※鳩居堂の名前入り便箋
1663年創業の老舗だが、本業より土地代の高さで有名。販売している便箋に名前を入れるサービスがある。
着物を馬喰町の問屋さんにお願いするときは、いつも馬喰町のカフェのマスターに仲介をお願いするのだけれど、仲介のお礼にマイセンの「真夏の夜の夢」のカップをさしあげました。お店に出してお使いくださいとお話ししたのだけれど、マスターは「もったいない」って言うのですよ。
桃の時期なのに、なぜか私に胡蝶蘭を贈ってくださる方が最近続いてね、「息子の就職先を紹介していただいたお礼」とかで。
あなたがいたときから、胡蝶蘭は3鉢ほどあったでしょう? それが今は6鉢になってしまいました。胡蝶蘭はちょうどバブルの頃にいろいろな企業で栽培・販売を始めたものでね、そのあとバブルが弾けたから、私としてはあまり良いイメージがないのですよ。
でも、せっかくいただいたからと思って、マンションのお隣の棟にいらっしゃる方に1鉢差し上げたのです。もうかなりのご高齢で、お独りでお住まいだからお部屋がにぎわうでしょう?
差し上げた後、しばらく忘れていたけれど、昨日『とらや』の5段雛井籠を別の方から2ついただいて、お父様も家にいらっしゃらないし、マンションの同じ棟の方に差し上げたら、「お礼に」って、胡蝶蘭を渡されたのです。それがどうも、この間、別の棟の方に差し上げた胡蝶蘭みたいなのですよ。嫌ね。
三月は「花見月」ともいうらしいから、がまんしましょう。「夢見月」ともいいますのよ。あなたも、夢をごらんになるとよろしいですわ。
桜の花が咲いたら、桜茶を送りますね。
ごきげんよう。
【解説】
※マイセンの「真夏の夜の夢」
1セット30万円以上するドイツの有名な陶磁器ブランドのカップ。オーダーするとマイセンの絵師が手書きでシェークスピアの作品世界を絵付けする。
※『とらや』の「雛井籠(ひなせいろう)」
「井籠(せいろう)」は、菓子を届けるときに使用するお通箱(かよいばこ)のこと。『とらや』には安永5年(1776)につくられた「雛井籠」が残されており、この「雛井籠」を模した化粧箱(井籠箱)を用い、小さな菓子を詰めた井籠を、好きな段数を重ねられる。雛まつりの季節のみ限定発売。1段:1,418円、2段:2,678円、3段:3,938円、4段:5,198円、5段:6,458円
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
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