広尾ヒマダム Vol.1

広尾ヒマダム:母からスイスに留学中の娘へのメール。ブルジョアな世界を垣間見よ!

鎌倉生まれ鎌倉育ち、自宅は広尾、夫は婿養子の社長。東京のブルジョアとして栄華を誇る広尾の暇なマダム、人呼んで『ヒマダム』。20代にバブルも経験し、自らの欲望に忠実に生きてきた女が50歳を過ぎたなら……。

この度東京カレンダーでは、暇を持て余したヒマダムが暇すぎてスイスに留学中の愛娘にせっせと毎日送りつけているメールの全文を入手した。

ヒマダムのメール、怖いもの見たさで、いざ開封……。

美咲さん

お元気? そちらはどう?
スイスの冬は暗くて寒いけど、今年は暖かいのですってね。私も、夏には行きたいわ。日本の夏って耐え難いですもの。

お食事、ちゃんと三度取らなきゃダメよ。

スイスに行ったら、『ラ・プレリー』に行きますからね。日本にも『ラ・プレリー』はあるけれど、整形外科も一緒になっているのは、モントルーだけですもの。それなりに効果はあるのですよ。だってあなたのCIMMARONのジーンズだって、ちゃんと履けたのよ、一瞬でしたけど。

今度、雛あられを小包に入れて送ります。雛あられには、白は雪、桃は生命、緑は木の恵みって、ちゃんと意味があるのですよ。日本人なのだから、和の心を忘れないようにしましょうね。

それから九段の『宝来屋』の雛菓子も入れますよ。懐かしいでしょう?さくらんぼとか果物や野菜の形をしたお菓子のセットが籠に入っての、あなた、小さい頃、好きだったでしょう?

桃の節句は、ちらし寿司、てまり寿司、それにはまぐりのお吸い物でお祝いしました。ちらし寿司といえば、マンションにあるスーパーで『久兵衛』のちらし寿しの予約受付のチラシをお手伝いの薫ちゃんから渡されたの。



【解説】
※スイスの『ラ・プレリー』
もともとは、スイス・モントルーの高級美容整形外科病院。アンチエイジングで有名で、女性を美しく甦らせる聖地ともいえる。 いちばん有名な施術は、黒羊の細胞を使った細胞活性化療法。

※宝来屋
九段の靖国神社の向かい側にある和菓子店。昔ながらの店構えを最近ビルに改築。

『久兵衛』も商売熱心ですね。以前はよく『久兵衛』のちらし寿司をお店に直接予約していたものだけれど。銀座の寿司店というと、オバマ大統領が来日したときに行った『すきやばし 次郎』がすっかり有名になってしまったけれど。私は、『すきやばし 次郎』の場所があまり好きではありません。

この間、お友達の吉野さんとそのお話になって、ビルの地下の『すきやばし 次郎』に行くなら、日本橋高島屋の『すきやばし 次郎』でいいのではとお話ししたのです。


二月の歌舞伎は昼の部にしました。『歌舞伎座』も新しくなってから席が取りにくくなって、あまり良い席ではなかったから、吉野さんと相談して、桟敷席にしました。だから、芝居見物の気分を出そうと思って、いつもの馬喰町の問屋さんにお願いして着物を新調しました。

二月だから裏葉色と青竹色の中間のような色の地に梅の花が書いてあるのにしましたよ。あと、地は白縹色の小紋柄。こちらは、デパートの外商さんから電話があったので、デパートでも誂えてておきました。

見たのは「太閤記」でした。さすが人間国宝だけあって菊五郎はすごいですね。でも、ちょっとお茶目な太閤さんで、おもしろかったです。歌舞伎の世界もだいぶ世代交代が進んでいると聞きますけれど、貫録がちがいますね。



【解説】
※歌舞伎座
1889年に開業した歌舞伎専門の劇場。2014年に昔ながらの佇まいを残しながら裏側に29階建てのビルを増築、 館内のおでん屋さんがなくなった。

※「太閤記」
「新書太閤記」のこと。吉川英治原作の「太閤記」を六代目尾上菊五郎が歌舞伎化したもの。

※菊五郎
七代目尾上菊五郎。六代目尾上菊五郎の孫。若いころは美男子で有名。

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