東京DINKS Vol.11

東京DINKS:女の嫉妬を甘く見ていた男の悲劇が、ついに始まる…!?

前回までのあらすじ

結婚後、子どもを持たない生活を選んだ太一と愛子。結婚前と同様に時間とお金を自由に使い、お互いを尊重し干渉しない2人。

夫・太一の浮気に勘づいた愛子。6年振りに偶然再会した昔の恋人・寛と自分も浮気する気でいたが、寛にその気はなく未遂に終わる。太一の浮気相手・葵は、太一に本気になり始め、愛子に対する嫉妬心を募らせる。久しぶりの夫婦デート中、愛子は勢いで太一の浮気疑惑を追及してしまい…。

東京DINKS第10話: 麻布台のレストランで露呈した、DINKSの絆の脆さと危うさ

ステーキを飲み込んだ太一は、ゆっくりと口を開いた。

「どうしたの、愛子?いきなり浮気とか。大丈夫だよ、浮気なんてしてないよ?」

焦った様子もなく、愛子の目を見ながら落ち着いた態度で太一は言った。愛子は黙ったままだ。

「不安にさせてたならごめんな。どうしてそう思っちゃったのかわからないけど、本当に浮気なんてしてないから。」

うつむいた愛子の顔を覗き込み、説得するような口調で、太一は言った。確実な証拠を突きつけられない限り、浮気の事実は絶対に認めないと心に決めていた太一は、いつも以上の落ち着きを演出する。

愛子は対照的に、浮気の確証もないまま自分が口走った言葉を後悔していた。

沈黙の後、愛子が顔を上げて口を開いた。

「ごめん、そうだよね。なんか最近仕事のストレスが溜まってて、ちょっと情緒不安定なのかも。疑ってる訳じゃないから、気にしないで。ほんとごめん……。」愛子は謝った。

「本当に?何か不安があるならすぐに言ってくれよ?」心配顔で太一は優しく微笑んだ。

太一と愛子は互いに謝り合い、気まずい空気を払拭しきれないまま、食事を続けた。



残業を終えた葵は、人が少なくなったオフィスを後にして駅へと向かった。

最近の葵の頭の中には、愛子の笑顔がこびりついて離れなかった。フェイスブックを開く度に、太一経由で愛子のページを見に行った。愛子のページに行っても葵が見ることができるのは、「誕生日おめでとう」と友人から投稿されているメッセージに、返信しているコメントだけだ。だが、それだけでも愛子の人となりを探りたくて、何度も見ていた。

会社の裏口から外へ出ると、暖かくなった空気が葵の頬を撫でた。恵比寿に住んでいる葵は、通勤には六本木一丁目ではなく、日比谷線の神谷町駅を使っている。ホテルオークラ別館と城山ガーデンの間の坂を下り、テレビ東京の横を通る時には、局に入るタクシーの後部座席に芸能人が乗っていないかをさり気なくチェックしながら、さらに進んで地下鉄の駅へと吸い込まれるように入った。

改札を入りホームに続く階段を降りると、葵が憧れている石黒寛の姿が見えた。葵は寛の容姿と落ち着いた雰囲気、こなれた女性の扱い方に接するたびに「理想的な大人の男」として淡い憧れを抱いていた。残念なのは仕事での絡みが少なく、飲み会の席ぐらいでしか話す機会がないことだった。だから今、ホームで見つけた事をチャンスとばかりに近づき、葵は迷いなく声をかけた。

【東京DINKS】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ