本記事は、2016年に公開された記事の再掲です。当時の空気感も含めて、お楽しみください。
前回のあらすじ
関西出身のインターネット広告営業マンのシンゴ(28)は、社会人6年目で突如、東京転勤に。
シンゴが蒲田の居酒屋で出会ったのは、キャビンアテンダントと不仲な、酒飲みのグランドスタッフの夏美。酔っぱらった夏美に絡まれながら、楽しく飲んでいるうちに、なぜか夏美と懇意にしている社長を、お客さんとして紹介してもらうことになる…。
前回東京☆ビギナーズ第7話:飲んべぇ美女から学ぶCA事情。○○と名刺ジャンケンがお好き!?
小和田常務からの契約奪還に浮かれるシンゴ
「シンゴさん、さすがです!あの偏屈な小和田常務から契約を取り返すなんて!!」
そう、オフィス内で歓喜しているのは、同僚のアートディレクターの「理恵」だ。
役員の気まぐれで消し飛びそうになった例の案件には、彼女も大きく関わっていた。理不尽な契約破棄を、気合いと根性と土下座で取り戻してくれたシンゴに、すごく尊敬の念を抱いているようであった。
「営業として本当に頼りになります。これからはどんな無茶な案件でも、仕事じゃんじゃん振ってくれていいですよ♪」
―ただ単に土下座しただけなんだけどな。意外と東京での仕事もちょろいもんやで♪―
少しばかり調子に乗っているシンゴは、更に案件をとってやろうと、とある“パーティ”に参加するつもりであった。
飲み友達からの顧客紹介、しかしそこに一緒に現れたのは…
―来週の金曜日に、仲間内のパーティがあるんで、シンゴさんも来てくださいね―
蒲田で出会った酔っ払いグランドスタッフの夏美にそう言われ、やって来たのは都内、中目黒のタワーマンション「中目黒アトラスタワー」のゲストスペースだ。
―最近急成長中のゲームアプリを作っているベンチャーの社長が、割とクローズドなメンバーだけでパーティをするの。なんでも、その会社、今年は大きく広告予算をかけて勝負に出るんだとか。―
半分は与太話のような情報だが、こういったところから大きな売り上げが生まれることも稀にある。念のため網を張っておこうとばかりに、パーティへと駆け付けた。
「あ!シンゴさん、久しぶりー♡」
紹介してくれた、泥酔グランドスタッフの「夏美」がいた。蒲田の居酒屋のスェットの時とは違い、オンタイムでのきちんとした服装の彼女を見て、一瞬だれだか分らなかった。
「さっそくだけど紹介するわね、この人がG社の社長の邦光さん!34歳でまだ若いのに、すごくイケイケなのよー。そして、横にいるのは…」
「広告代理店で働いている、溝口です。今日はよろしくお願いしますね。」
―げっ!思いっきり競合の会社やん!こいつら仲いいのか…。―
お目当てのゲーム会社社長の横にいたのは、巨漢で色黒の20代後半と思しき男性であった。身長は180㎝後半はあろう溝口と名乗る男は、聞けば業界大手のライバル代理店であった。そして、G社邦光社長とは昔からの飲み友達だという。
―情報先取りしようとしてたのに、完全に回り込まれてるな…。―
いつも弱気なシンゴだが、今日だけは違った。小和田常務とのやりとりで自信を付けたこともあり、臆することなく積極的にコミュニケーションを取っていくことにした。
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