その道一本!ひとつの食材を極めた専門店の別格すぎる鍋

〝餅は餅屋〞。ならば……、○○専門店の○○鍋はテッパン!ひとつの食材に特化した店ならば、その扱いには長けており、旨いこと間違いなし。

ということで、その道一本の専門店が供する別格すぎる鍋をご紹介。スペシャリストが作る鍋に胃袋を委ねよう。

【鰯】いわし

日本各地の沿岸で水揚げされる青魚。”鮮度が命“で通年楽しめるが、夏から初冬にかけてが旬。
栄養豊富で多彩な料理法で楽しめる。

つみれ鍋(¥2,500)。こちらで1人前。きのこ鍋かと見紛うほどたっぷりと供される。いわしのつみれはつなぎは一切なし

きのこの中で際立つ存在感いわしの旨さを再認識する『長屋』の"つみれ鍋"

新橋

昭和の面影を残す、風情のある新橋の一角。長唄・端唄・小唄が流れるこちらは昭和58年より営むいわし料理の名店だ。いわしは何より鮮度が命。「活きがよく脂ののったいわしは、まぐろにも勝るとも劣らない」と太鼓判を押す、ご主人の柴山裕行氏。料理の幅も広く、調理のしがいがあるという。

この時期の目玉は何と言っても「つみれ鍋」だろう。とはいえ、主役のいわしを覆い隠さんばかりに、皿にこんもりときのこを盛り込むのが『長屋』流。あわび茸やたもぎ茸、やまぶし茸に朱鷺色平茸など、珍しいきのこも含めその数13種類。フツフツと沸く出汁の中にきのこ、野菜をまず加えていき、最後につみれを優しく落とす。

待つことしばし。出汁をまとったつみれは馥郁とした香りでほんのりとした甘みがあり、いわし独特の風味が余韻となる。この味、この香り。ここでやはり主役はいわしなのだと合点がいく。そんな意外性のあるオチもまた楽しい。

旨み成分を多く含むきのこと鶏肉が美味しさを倍増させる。栄養価も高く、ヘルシーで男性はもちろん女性にも人気が高い

いわし料理の名店として足繁く通う顧客も多い。鍋コースもあり、いわしを使ったオリジナルのお惣菜パンも供される。帰りには珍しい、いわし飴のサービスも

【蛸】たこ

秋から冬にかけて旬を迎えるたこ。
真だこに比べ水っぽい水だこだが、しなやかな歯触りと滋味は真だこ以上。
薄くスライスするたこしゃぶが人気だ。

名物たこしゃぶ(2人前より)。皮を外して吸盤も取り除くと透明感のある白い身に。厚みひとつにしても味が変わるという繊細さ。白菜などの野菜にわかめや葛切りも。

サク、クニュ、トロの食感魚介しゃぶしゃぶの最高峰『三忠』の"名物たこしゃぶ"

千駄木

築地市場でまず“たこ”に驚いたという、店主の佐藤由之氏。下処理や扱い方が料理人によってあまりに違う。がぜん興味が湧き「一から十までやってみたい」と、千駄木にたこの専門店を開いた。

名物たこしゃぶに選んだのは、北海道釧路産の水だこ。身質は極めて柔らかく、一度凍らせてからスライサーで薄切りにする。昆布出汁は温度が高いと白っぽく硬くなり、低くても旨みを逃がす。その中間のいい頃合いで“しゃぶしゃぶ”とやるのが極意だ。

北海道釧路産の水だこ。たこしゃぶを食べ歩き「さらなる美味しさを追求したかった」と、店主の佐藤氏。探求を重ね、美味なたこしゃぶを完成させた。淡い味の中に旨みを秘める水だこは、ふぐにも通じる

まず、出汁を沸かしたら白菜、ねぎなどの野菜やきのこを少量投入。再び沸いたら火を弱め、ゆらゆらする出汁の中に水だこを泳がせる。投入してすぐに縮むようでは、せっかくの水だこが台無しだ。

火が通ると白くなりエッジはクシュクシュと縮み、芯にある甘みがグッと引き出される。ポン酢をちょんとつけて口に入れれば、独特の歯触りと噛むほどに甘みがじわりじわり。“悦楽”とはまさにこのこと!

店内はゆったりしたテーブル席と窓際の小上がり席で構成。鍋の季節は多人数での利用も多い。予約してからの利用がおすすめ

下町情緒を残す千駄木に暖簾を掲げるたこ料理専門店。地元の飲食店とも交流を持つ店主・佐藤氏の気さくな人柄にも惹かれる

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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