不敵な笑みを浮かべる、東京色?に染まった後輩・優子
「ごめん…、遅くなって!」
「私も今来たところなんで、大丈夫ですよ♡」
ランチの普段使いに重宝する、代官山の『中國名菜 龍坊』で待っていたのは、優子だった。たまたま、お互い近くで仕事が重なったので、ランチをしようという話になったのだ。
(玲子にコテンパンにされたばかりの先輩で、今日は楽しんでやろうかしら。)
不敵な笑みを浮かべる優子。
「こないだはありがとう。玲子ちゃん対策で色々とご教授頂けて助かったよ。やっぱり優子はすごいんやね。さすがは東京の先輩やで。」
料理を食べながらシンゴは、取り急ぎお礼を言った。フラれてしまったとはいえ、優子のデートプランはパーフェクトだったからだ。
「やっぱり、まだ東京の街にも、東京の女の子にも慣れてないから、ビギナー卒業に向けてもっと色々と教えて貰えると助かる!結局、玲子ちゃんにはフラれちゃってんけどな…。『社長系じゃないと嫌』とか言われて…。」
(フフッ。へこんでるへこんでる!)
「へぇー、玲子そんなこと言ってたんですかー?なんか感じ悪いですね!でも世の中の男性の平均年収は500万円って言われてるくらいだし、社長には勝てないにしても先輩は頑張ってるほうだと思いますよー♡」
玲子もシンゴのことも、両方ともマウンティングして楽しんでやろうというのが彼女の魂胆だ。
え、凹んでない?シンゴの天然系ポジティブシンキングが炸裂
「いやぁ、社長系の系ってなんなんやろうって、あれからずっと考えてて。結論、『将来社長になりそうなくらいの大きな器』って意味なんかなと思って。まだまだそういう風に見えないあたり、もっと俺頑張らないとなって思って!玲子ちゃんにフラれたのは、むしろいい刺激になったよ!」
(え?何そのポジティブシンキング…。全然面白くない。)
天然なのか、意外にもカラっとしたシンゴの態度に、イライラしはじめる優子。
優子の実は腹黒い性格に、全然気づいていないようだった。
(しかもなんで玲子が褒められてるの。面白くない。)
「でも彼女、社長とのコネクションが出来たのは今の会社に入ってからで、それまではすっごい地味な女の子だったんですよ。早稲田大学の政経でジャーナリズムか何かを勉強していた、いわゆるガリ勉で。結局志望していたマスコミ関係全部落ちて、近い業界でまだ黎明期だったPR会社に拾って貰って、今みたいになって。社会人デビューって感じで正直ダサいですよね(笑)」
言いたい放題である。
―そ、そうだったのか…。―
「玲子ちゃん、派手に見えて、意外と苦労してたんやな…。実は、めっちゃええ子やったんやね!ちょっと応援したくなったわ、俺!」
(ぐぬぬ…。こいつ天然なの?)
自分の思い通りにいかないシンゴの態度に、言葉が詰まってしまった。
「とはいえ、玲子にはフラれちゃってるんでしょ(笑)そうだ。先輩に合いそうな女の子、いっぱい紹介してあげますよ!色々とアドバイスしますから、素敵な彼女を作って、東京ビギナー卒業しましょう♡」
目が笑っていない。どう見ても訳アリ女子を紹介する気まんまんの顔である。
「お前めっちゃええやつやな!俺頑張るわ!」
能天気な本人を他所に、黒い欲望が渦巻いていく。果たして、彼はこの先どんな女の子たちとデートを重ねていくことになるのやら。



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