2015.12.19
「民宿」と聞いて、どんなイメージの宿泊施設を思い描くだろうか?
決して華美でなく小規模だけれど、だからこそ体験できる良さもある。土地に根ざした確かな素材を使い、主が手ずから作るその味は旅の思い出を色濃くしてくれるはずだ。
今回は、フォトジャーナリストとして世界各地を取材し、食文化にまつわる著作も多い森枝卓士氏に、進化し続ける近年の「民宿」事情について語ってもらった。
かつての民宿は、田舎の味を出すのは「失礼だ」という感覚があった
能登に『さんなみ』という民宿があった。日本一といわれていた民宿である。夫婦二人で続けるには体力が……ということで、2011年、残念ながら閉めてしまったが、それは素晴らしい宿だった。土地の味を満喫させてくれる、だから、遠路も厭わないという民宿。民宿はこうあって欲しいと思う宿。
ところで、その昔、主であった船下智宏さんに、どのようにしてその形が出来たのか聞いたことがあるのだが、あまりにも意外な話だったもので、昨日のことのように覚えている。
先代、あるいは周囲で民宿を営む人々には、都会から来るお客さんに、田舎の味を出すのは「失礼だ」という感覚があったというのだ。今や知らぬものはない能登の魚醤、いしりにしても、醤油が高くて買えないから作った代用品という感覚。これが一切れあれば、御飯、3杯はお代わりしてしまうという禁断の美味、コンカイワシ(米糠に漬けたイワシ)も田舎臭くて、都会の人が好むわけがない、と。
かくして、どこにでもある刺身(にお醤油)やテンプラという組み合わせが、食卓に上っていたという。「でも、せっかく遠方から来てくれるのに、少しは土地の味も……」と、「こわごわ、少しずつ」土地の料理を出していたら、それが美味しいと言われ、気がつけば能登の地の料理を美味しく食べさせてくれる宿、発酵食品の宿等と呼ばれるようになったのだというのだ。
地方料理の味わいや面白さが認識され、提供されるように
もしかしたら、地方に行ったら土地の名物を食べるのが当たり前と、それしか知らぬ世代には、なんと馬鹿な話と思われるかもしれない。しかし、地方出身者には痛いほど分かるはずだ。方言で話すと馬鹿にされる。標準語を話さないと。そんな感覚に近いといえば、分かってもらえるだろうか。
それが、スローフードであったり、地産地消であったりの価値観の「発見」を通して、標準語ではない方言の味わい、東京や京都とは違う面白さというものが存在するのだと認識されるようになったのだ。宿など営む側も、「そうか、普段食べているものを出してもいいのだ」と自覚するようになる流れがあったのだと思われるのだ。
そう書いていて、思い出した。私事ながら、1970年代の末あたりから、東南アジアに通い、その食に夢中になったのだけど、それと重なるのだ。当時の現地の人の、『外国人にタイ料理が、マレー料理が分かるはずがない』というあの態度。80年代以降に起こったエスニックのブームを経て、そんなことは昔話になったが。
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