やまとなでしこ 2015 〜極上の結婚〜 Vol.12

やまとなでしこ2015 行き遅れに怯える「浦島太郎恐怖症」の女たち

前回までのあらすじ


27歳の桜子は「(並みの)結婚をした女は負け犬」と考え、持ち前の美貌と教養とセンスで「極上の結婚」を狙っている。某企業の次期社長のポジションにいる交際相手・隆弘を手堅く押さえつつ、更なる高みを目指す。弁護士の長田とのデート、時代の寵児・若き起業家の国分とのデートの二戦では思うような戦果が得られず、停滞気味の桜子だが・・・

前回:時代の寵児・国分との深夜デートの行方

「ほらねぇ。だから言わんこっちゃない。」

8月も最終週の日曜日。

桜子、美穂、香織の3人は、中目黒の高台にオープンした『レストラン サラマンジェ』で、14時過ぎに集まりシャンパンを飲んでいた。

食前酒を楽しむイタリアの食文化「アペリティーボ」は最近東京でも定着しつつあるが、更に最近「サラマンジェ」というスタイルが生まれつつある。 これは、何時でも出入りできる家庭のダイニングルーム的なニュアンスで、フランス語の食堂という言葉から生まれた。 朝8時から夜21時半まで時間を気にせずに食卓を囲む自由で新しいスタイルだ。

『レストラン サラマンジェ』で、ここ最近の近況(長田との一戦国分との一戦)を美穂と香織に報告すると、二人ともまるで鬼の首でもとったかのように、高らかに笑った。

「バチが当たるって言ったでしょう。」

「さすがの桜子も少しは懲りた?」

異常気象で記録的な猛暑がしばらく続くと思いきや、今年の夏の突然のthe end具合はなんだ。その切り替えの早さは見事なほどで、桜子は、そんな見切りの早い女にならなきゃダメだと思う。

桜子は、得意げな二人に諭すように話す。

「はいはい。お気遣いどうもありがとう。だけど、後悔してみて、ようやく前の方が良かった、って実感できるもの。やって後悔とやらずに後悔は、似て非なるものよ。」

美穂は眉間に寄せたシワをさらに深くする。

「そうね。その経験をもってして・・・桜子28歳の誕生日間近に迫ってくるけど、どういう決断にするか決めたの?」

香織が追随する。

「とは言っても、桜子の手元に残ったカードは、隆弘さん一枚だけ。ということは・・・・」

美穂と香織は、顔を見合わせてハイタッチをする。

「桜子もいよいよ年貢の納め時ね!」

「高い年貢だったわねぇ・・・感慨深いわ。」


はしゃぐ二人に向かって桜子は天を仰いでため息をつく。
香織が、ため息を見逃さずに睨みをきかせる。

「桜子、20代は楽しく享楽的だけどね、楽しすぎる時期を堪能しすぎて見誤ったときの教訓は「浦島太郎」を参照のこと。先人の教えは流石よねぇ・・・あっという間に若さの記憶を引きずったお婆さんの出来上がり。」

桜子は、視線を天から香織に移す。

「あら。香織わかってるじゃない。それにしても、香織は、浦島太郎恐怖症になりすぎてるんじゃない?その決断で本当に後悔しない?」

1年付き合っている商社マンの彼との将来で悩んでいる香織に毒づく。香織は以前、毎月の生活費のやりくりに獅子奮迅する将来が見える、と酔った時に漏らしていた。痛いところを突かれた香織は、口を噤む。

「おっしゃる通り、浦島太郎になりたくなければ香織みたいに妥当な線で妥協するのが賢明。開けてびっくり玉手箱、煙もくもくお婆さんになってからじゃ遅いものね。ここから先は、安易な行動はご法度。慎重な綱渡りになるわ。」


美穂が驚いた様子で桜子を見た。

「桜子、まだ綱渡りするつもり?あと20日でしょう? 他のカードがあるの?」

桜子は、大げさにため息をつくと、不敵な笑みを作った。

「神様から授けられた、無限の可能性を秘めたカードよ。残念ながら、私は、ワンペアで上がるのか、ツーペアあたりの人生は、浦島太郎になるより怖いの。婚姻届けのハンコを押す日まであがくつもりよ。」

その時、テーブルの上においてある桜子の携帯から、LINEのポップアップ音が響く。

おもむろに携帯に手を伸ばし、差出人を見て桜子は動揺した。

「司」

急激にフラッシュバックしてきたいくつもの思い出が濁流のように桜子を襲い、先ほどまでの不敵な笑みは見る影もなく消えて無くなった。

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