誰にも教えたくない!本当の隠れた名店8選

会員制や紹介制……そんな秘密の美食店には、店の数だけこだわりがあり、その本質を理解した客のみに扉は開かれる。 本当は教えたくない、本当の隠れ家。こっそり教えます。

こだわりの照明、ドウダンツツジが作り出す木陰、内なのか外なのかさえ忘れて寛げる空間は、B&Oのステレオから流れる優しい音で満たされている

運河の街に佇む、麗しの桃源郷『FUKUSAKO』

八丁堀

素材本来の滋味を豪快に味わえる恵比寿の人気和食店『福笑』。インターフォンで密やかに入る隠れ家の草分け的存在でもある同店の店主・福迫淳一氏が、自身の理想を推し進めるカタチで新店をオープンさせた。

八丁堀駅の地下構内から地上に出ると、かすかに漂う潮の香り。亀島川を越え、オフィス街をそぞろ歩くと、苔に覆われたエントランスがひっそり現れる。ここが、古い民家を全面改築した『FUKUSAKO』だ。

飾棚にはラリックの皿や倉敷ガラスなど希少な器がズラリ

アーチ型のアンティークの扉を開くと、自然素材と工業素材が見事に融合した唯一無二の空間。可憐な釣鐘型の花をつけるドウダンツツジが影を落とすのは、楠の木を丸ごと1本割って作られたカウンターだ。

幹のカーブや鋸の目までそのまま残したという福迫氏は「普通は鋸の目をならしてしまうんですけど、どうしても目を残したくて、自分で表面にヤスリをかけ、椿油を馴染ませたんです。良いでしょ~。触ってみてください」とエビス顔。触れた瞬間、件の楠が立っていた九州の大自然が迫ってくるような感覚を覚え、思わずカウンターに頬ずりしたくなる。

恵比寿『福笑』でもお馴染みの堂々たるアスパラ

「神様がくれた味が一番美味しい。良いものを仕入れたら、後はあまり手を加えないほうが美味しい」とご自身も“神様顔”の福迫氏が供するのは、おまかせコースのみ。全国津々浦々の農家や漁港より直送される素材は、既知の素材であっても、自然界にある色の濃さ、鮮やかさ、ダイナミックなフォルムに改めて驚かされるものばかりだ。

はちきれんばかりのアスパラ、向日葵のように黄色い玉蜀黍。徳島産の岩ガキにいたっては赤ん坊の頭ほどある。また、浜名湖で揚がる幻の蟹・ホウマンガニは渡り蟹と上海蟹を合わせたドリームタッグ的味わい。

山と積まれた毛蟹が湯気をあげる。このライブ感!!

拳ほどの大きさのヤドカリは、苦み、旨み、甘みが一度に口中に溢れだし、脳髄を震わせる。ちょっとやそっとでは表現できない旨さだ。蟹、ヤドカリ、どちらも下味はついているが、基本的には茹でたものを豪快に割っていただく。その間に煮付けたノドグロや賀茂茄子など、緩急つけて供される料理は小皿を含めて十数皿。

もちろんその量は、その時の仕入れや老若男女、食べるスピードなどあらゆる条件で変化する。さながらその様は即興で魂の音楽を構築していくジャズセッションだ。

“神様顔”の料理人が、心の導くままを詩的に具象化したこの場所。桃源郷とはきっとこんな場所に違いない。

亀島川を越え、オフィス街をそぞろ歩くと、苔に覆われたエントランスがひっそり現れる

店内をぐるりと見渡すと、細部にまで、福迫氏のこだわりが窺える。もちろん、こだわりは調度品だけではなく、素材にまで行き届いている

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