非常によくおモテになる殿方のホワイトデー Vol.3

100円チロルチョコから鮨で200倍返し?

「遅くまでお疲れ様」

僕の部署を管轄する執行役員のマリ(33)が声を掛けてきた。

新サービスのローンチが近く、プロジェクトが佳境に入っていた2015年2月13日。僕は深夜を回っても帰宅できない日々が続いた。

「さっき会食から戻ってきたんだけど、来週サービスインでしょ?きっと雄太くんのことだから遅くまで仕事してるんじゃないかと思って」

「よくわかりましたね」

マリは僕の新卒時代のチームのマネージャーだった。当時から綺麗で社内の人望も厚い。一方で、仕事は泥臭く徹夜も厭わない女性だった。

「そういえば明日はバレンタインね。少し早いけど、これあげる」

チロルチョコだった。5個くらいある。

義理チョコならチロルチョコは1個だろう。しかし、マリは僕に5個もチロルチョコをくれた。しかもこんな真夜中に。わざわざ会社に戻ってきて僕のために?妄想は膨らむばかりだった。



暖かくなってきた3月初旬のとある日の22時頃。帰路に着くエレベーターでマリと鉢合わせた。

「あなたのチームがリリースした『ゴリラ』、調子いいみたいね」

「おかげさまで。仕事も一段落したので、久々に一緒に食事しませんか?ホワイトデーのお返しをしますよ」

「え、お返し?笑」

さすがにチロルチョコで勘違いする僕ではない。義理チョコだってわかってる。だがこの格好の誘う機会を逃すわけにはいかなかった。

銀座一丁目の『鮨たかはし』を予約した。執行役員の彼女は社内外問わず会食が多い。下手なフレンチに誘うわけにもいかず、鮨屋で日本酒を飲みながらしっぽりやるのが得策と見た。

「お待たせ。こんなお店を選んでくれるようになったとは、大人になったのね」

「僕だってもう30歳。鮨屋の1つくらい抑えていますよ」

「私もお鮨は好きだけど、このお店ははじめて」

「ここの店主の高橋さんは三ツ星の『さいとう』出身で、2014年にオープンしたばかりなんです」

「だから知らなかったのかな。新店を抑えてるなんて、なかなかやるわね」

ここの鮨は間違いようがない。万人ウケする正統派。オープンしてそろそろ1年だが、既に予約が取りにくい。

「んー、美味しい!私もそれなりにお鮨は食べ歩いてるけど、ここはかなり美味しい」

マリはかなり満足そうだ。

「チロルチョコ、嬉しかったです。5個もくれるなんて」

「特に深い意味はないのよ(笑)。チロルチョコを100個くらい買ってて、翌日は部署のメンバーに適当に配ったの」

「もちろん、深い意味がないことはわかってますよ。でもそのきっかけがあったから、今日は二人で食事できた」

「え?」

「特に深い意味はありませんよ(笑)」

いつまでもマリにからかわれ続ける僕ではない。

チロルチョコ5個で100円。この日の会計はビールと日本酒を飲んで1人2万円ほど。敢えての200倍返し。

さてと。二軒目でギアを入れにいこうか。


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