「遅くまでお疲れ様」
僕の部署を管轄する執行役員のマリ(33)が声を掛けてきた。
新サービスのローンチが近く、プロジェクトが佳境に入っていた2015年2月13日。僕は深夜を回っても帰宅できない日々が続いた。
「さっき会食から戻ってきたんだけど、来週サービスインでしょ?きっと雄太くんのことだから遅くまで仕事してるんじゃないかと思って」
「よくわかりましたね」
マリは僕の新卒時代のチームのマネージャーだった。当時から綺麗で社内の人望も厚い。一方で、仕事は泥臭く徹夜も厭わない女性だった。
「そういえば明日はバレンタインね。少し早いけど、これあげる」
チロルチョコだった。5個くらいある。
義理チョコならチロルチョコは1個だろう。しかし、マリは僕に5個もチロルチョコをくれた。しかもこんな真夜中に。わざわざ会社に戻ってきて僕のために?妄想は膨らむばかりだった。
◆
暖かくなってきた3月初旬のとある日の22時頃。帰路に着く......
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