非常によくおモテになる殿方のホワイトデー Vol.2

大学同期からの昔日の告白:非常によくおモテになる殿方のホワイトデー

とある2月の日曜の夜。久々に大学時代のサッカーサークルの連中5人くらいで飲む機会があった。早稲田に通っていた僕らは、学生時代はここ高田馬場で安い酒ばかり飲んでいた。

「社会人になって雄太はかなり色気づいたよね。洒落た店ばかりFacebookにupしてる」

マネージャーだった恵里が言う。学生時代は酒が強く「ザ・ワセジョ」なキャラだったが、今では生命保険会社に一般職として就職し、すっかりおしとやかだ。

「お前こそ、キャラ変わったな。人のこと言えねーよ」

日曜日ということで22時にはお開きに。恵比寿に住む僕と目黒に住む恵里は山手線で帰る方向が一緒だった。他愛もない話をして山手線の中の時間をやり過ごす。

「じゃあ、またな」

「あっ、これ。昨日バレンタインだったでしょ?」

「いつからそんな気が利くようになったんだ。さんきゅ」

家に帰って開けてみると、デルレイの洒落たチョコレートだった。しかも、手紙付きで。



後日、恵里にメールした。

ーチョコレート食べたよ。ありがとう。あんな洒落たモノを選ぶセンスがお前にあったんだなー

ーひっどい。卒業して私のセンスも変わったのよー

ー御礼(お詫び)がてら、麻布十番で飲まないか?ー

ーうん。3月15日なら空いてるー

日曜日の18時、比較的新しい麻布十番のカジュアルな中華『ナポレオンフィッシュ』に恵里を呼び出した。明るい店内にかこつけて、朗らかに僕は切り出した。

「手紙、読んだよ。びっくりした」

恵里は穏やかに微笑み返す。

「俺もお前のこと、いいなって思ってたから。でもお前、松野先輩と付き合ってたじゃん」

恵里とサークルで一緒だったのは10年前。今はお互い違う道を歩む。僕には大切な恋人がいるが、時を10年前に巻き戻せたら。一瞬でもそう思った。火鍋をつつきながら反芻した。

「私、結婚するんだ」

まさかのカミングアウト。

「会社の先輩と。式は4月に挙げる。さすがに昔好きだった人は呼べない。だからこの前の飲み会でも、みんな黙ってくれていたの。いまさら昔のこと言ったってどうにもならないのはわかってる。伝えたかっただけ」

マジかよ。僕は声に出さず心の中で呟いた。

「私は幸せになるから、雄太も幸せになってね!」

学生時代とは打って変わっておしとやかになった恵里の瞳が艶っぽく潤んでいる気がした。

「飲もう!学生の時みたいに潰してやる」

恵里の酒の強さは、学生時代と全く変わっていなかった。この後、飲み比べ、結局僕が潰された。


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