非常によくおモテになる殿方のホワイトデー Vol.1

非常によくおモテになる殿方のホワイトデー:後輩からの思わぬ告白

午前11時からチームの定例ミーティングに出ていた。僕は男性向けキュレーションメディア「ゴリラ」というサービスのプロデューサーで、10人ほどのチームを率いている。12時を回り、ミーティングを切り上げ、自席に戻ろうとした時だった。

「雄太さん、ちょっといいですか?」

チームで最年少・編集担当の理沙(23)が神妙な面持ちで声を掛けてきた。

表情を察するに、これは二人で話した方が良さそうだと思い、他のメンバーが会議室から出るタイミングを見計らった。

「あの・・・よければこれ、受け取ってください!」

ブルガリのチョコレートだった。

「今日はバレンタインか。深刻そうな顔してるからどうしたのかと思ったよ。ありがとう。義理チョコにしてはたいそうなチョコだな」

いつもの如く、つい軽口を叩いてしまった。

「・・・義理じゃないです!」

そういって理沙は会議室を飛び出して行った。乙女心は繊細だ。僕は何も分かっちゃいない。



3月に入っても理沙の僕に対する態度はよそよそしい。さすがに悪いことをしたなと思い、彼女のデスクに手紙を置いておいた。

ー 理沙へ

この前はいつもの調子で軽はずみなことを言ってすまなかった。もしよければ、3月12日にお詫びの食事に招待したい。20時から中目黒の『ギャマンブロックス』で待ってる。

雄太 —

理沙からは3日後に「行きます」というそっけないLINEだけが返ってきた。

『ギャマンブロックス』はあの白金の人気店『オーギャマンドトキオ』(現在は恵比寿に移転)の姉妹店。鉄板フレンチだが、店内はアメリカのウエスタン調。シリアスにならずに明るくポップに仲直りするには悪くない雰囲気だと思い、ここを選んでみた。

僕が20時に着くと既に理沙が先にカウンターに座っていた。それも浮かない顔をして。

「早いな。来てくれてありがとう」

僕はできる限りの優しい声で、声を掛けた。

「鉄板焼き屋ってこともあって、ここは肉が旨いんだ。理沙、肉が好きっていってただろ?」

「え、そんなこと覚えてくれていたんですか?」

少し明るい表情になり、理沙が微笑んだ。

「わー!美味しそう!」

肉を頬張りながら、いつもの笑顔が戻ってきた。最近どんなメディアの記事を読んでいるかなど、何気ない話をしたが、仕事への理沙のひたむきさが伺えた。

「チョコレートありがとう。嬉しかったよ。これからも一緒に仕事、頑張っていこう!」

理沙はチョコレートを渡す時に義理ではなく本命だと言っていた。もちろんそのことは覚えている。だがそのことには敢えて触れず、極力傷つけずにこれからも変わらぬ関係を継続できるよう、計らった。


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