ファーストデート・女の採点表 Vol.4

外苑前商社マン(34)の『urura』(松濤)での失態

六本木の外資系投資銀行勤務に勤める浩(29)の急な告白から、気付けば浩のことばかり考えている愛子(27)。愛子は、浩が最後に告げた「そういうこと」の意味を反芻し多方面から言葉の解釈を求めている。愛の告白と受け取ったのだが、あれから1週間浩からの連絡はない。

今夜のデートに頭を切り替えることにした。デートの相手は、外苑前の商社勤務の加藤さん(34)。愛子は正直商社と代理店の男は興味がない。給与は外資ほど高くない割に遊び方といったら外資以上に派手。乗り気はしないが、本命(浩)から連絡も来ないし、暇つぶしに一旦は会ってみた。

今夜の店は、渋谷の人気ビストロ『Aruru』の姉妹店として誕生した『urura』。『Aruru』を逆から読んで『urura』。こういうユーモアがあるお店に女は弱い。温かみのあるウッド調の内装は『Aruru』の良さそのままに、さらに広々とした隠れ家的大人のビストロ。

仕事が終わらず30分の大幅遅刻で店に到着すると、加藤さんは嫌な顔ひとつせずからかった。「そんなに俺と会うためにお化粧念入りにしてくれたの?」一瞬、「?」と思ったが、周りを見渡せば女子会やカップルだらけ。この空間に一人待たせてしまったと思うと申し訳無く、この軽口は愛子に気を使わせないようにするための気遣いだと知り少しだけ加藤さんのことを見直した。

ユーモアは店名だけではない。「腹黒キッシュ」や「大人のどらやき」などの遊び心に富んだメニューも。カラスミを混ぜたキッシュは見た目は真っ黒でびっくりするが、中にはカニや魚介が入っていて、フワッフワの食感。このギャップが腹黒なのだろう。

「まさに、愛子ちゃんみたいだよなぁ。見た目は清純そう。だけど実は・・ってきっと俺いい線ついてるはず」

そう言って加藤さんはニヤリと笑った。

初対面ながら、毎日のように飲み歩いていることを見透かされたようでひやっとしたが、気付けば猫を被ることなく素を出しリラックスして楽しんでしまった。

「あーこんなに楽しい晩飯、久しぶりだな。」

加藤さんがつぶやいた一言に、なぜか嬉しくなる。

ちょっとトイレと、立ち上がったように見せ、さりげに伝票を掴んでいった加藤さんの後ろ姿を見て、商社の男も捨てたもんじゃないんだなぁ・・と持論をひっくりかえそうかと思った矢先、加藤さんの携帯が鳴った。

携帯は「みお」からの着信を告げ、ご丁寧に画面には、まだ2、3歳と思しき子供が笑顔で笑っている写真が映し出されている。

ー既婚者、しかも子供持ちー

愛子は、さきほどの改心しかけた心を全力で撤回し、バッグを掴み店を出る。気づいた加藤さんが驚いて呼びかけたが、知らんぷり。

「あーあ。やっぱり商社の男はダメね。時間の無駄。次いこ次。」

帰り道、愛子の携帯にLINEが鳴る

ー麻布病院の竹内です。覚えてますか?ー

泣かぬなら、次に行くべしホトトギス。

そうして、次の1stデートに向けて飽くなき探求を続ける愛子であった。


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