Q1:二度のデートで、男が微かに感じ取っていたことは?
亮太と出会ったのは、共通の友人が開いてくれた食事会だった。
場所は、六本木にある会員制飲食店。バー利用では何度か訪れたことがあったものの、食事利用では初めてだった。
何度か訪れたことのあるお店だったので、仕様はわかる。
女性が綺麗に見える、少し薄暗い照明に“会員制”という特別感。
こういう場に呼ばれる時は、私はいつも気合を入れる。この日も、お気に入りの洋服に、“チープな女”と見られないよう、お気に入りのハイブラのバッグにアクセもフル装備で向かった。
「初めまして、真由香です」
そう言って微笑んだ先の、正面に座っていたのが亮太だった。色々と話をしているうちに、亮太は喜んで自分のことを話してくれた。
都内出身で、実家も裕福。日系の証券会社に勤めているという34歳。
正直、こういうハイスペックな男性には、これまで何人も出会ってきた。だからこそ、大体の扱いもわかっている。
「亮太さんって、金融系なんですね。すごい」
「いや、そんなことないよ。普通のサラリーマンだから」
謙遜する亮太に、私は素直に感心してみせる。こういう時は、あまり自分から前に出ないほうがいい。
「休みの日とか、何してるんですか?」
「ゴルフとか、あとは実家に顔を出したりかな」
「素敵ですね。私、そういう落ち着いた感じの人好きです」
そして、職業のことは根掘り葉掘り聞かないこと。なぜなら、お金や肩書にがっついているような女に見えるから。
「真由香ちゃんは、何のお仕事をしているの?」
「私はPRの会社に勤めています」
「そうなんだ。仕事、もう長いの?」
「5年目です。最近、仕事が楽しくて」
またこういう男性に有効なのが、“自立している”アピールだ。
別に、私の方の年収はどうでもいい。ただ仕事を頑張っていることをアピールするだけで、だいぶ印象が変わる。そのことを知っているからこそ、私は言葉を選びながら、極力控えめに話していた。
するとこの作戦にしっかりハマった亮太は、すぐに私をデートに誘ってきた。
一度目のデートは、亮太の行きつけだという西麻布のレストランだった。老舗のレストランを選択してくるあたり、亮太の育ちの良さをどことなく感じる。
「これ、すごく美味しいですね」
「お口に合ったなら良かった」
「亮太さんは、いつもこういうお店に来るんですか?」
「うん、たまにね」
初デートの失敗は許されない。だからワインを選ぶ時も、私はあえて主張せずに相手に委ねる。
「真由香ちゃんは赤と白、どっちがいい?」
「お任せします♡」
本当は好みがあったけれど、ここは彼を立てておくのが正解だ。
初デートでは、男性を立てること。
上京してからデートを繰り返してきた私にとって、こんなことは常識だ。
だからもちろん。お会計の時、私はあえて財布に手をかけながら聞いた。
「あの、お支払いは…」
「いいよ、僕が出すから」
「ありがとうございます。ごちそうさまでした」
内心では、こうなることはわかっていた。でも最初から奢られる態度を見せたら、“財布目当て”だと思われかねない。ここはちゃんと振る舞っておくのが正解だと思う。
「真由香ちゃんって、なんでそんないい子なの?」
「そんなことないですよ」
「次、いつ会えるかな?」
こうして、グイグイと亮太から来る構図が完全に出来上がった。
しかしこの後。私の計算が、大きく崩れることになる…。








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