洗練と品格が交差する広尾。この街を選んだアッパー層の暮らしは、妥協なき上質で満ちている。
そんな大人たちが認める店は、確かな味に加え、通うごとに満たされるような、居心地の良さも兼ね備えている。
決して華美ではないが、地元民が愛してやまない実直な良店にこそ、最高峰の“日常”がある。
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1.シャンパンなのか日本酒か。広尾ネイティブの蕎麦前は実直でいて洒落ている
『蕎麦 たじま』
夜の帳が下りるころ明かりを灯す蕎麦店に、ひとりふたりと大人が集う
気の利いた蕎麦前と酒を愉しみ、しなやかで滑らかな喉越しの蕎麦で〆る。
一ツ星に輝く美味と町蕎麦の温かみが同居する粋な夜が、広尾のこなれた大人の日常として定着している。
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夜の有栖川公園の静寂を感じながら、テレ朝通りを進んでいくと辿り着く『蕎麦 たじま』。
駅から近いとはいえない立地ゆえ、広尾に通い慣れた客や近所に住む大人が多く、その客層の良さに街の品性が滲み出ている。
季節の味を気軽に楽しむ術を心得る
良いものを知る大人たちを魅了するのが、この店の蕎麦前と手打ち蕎麦。
旬の食材を使った一品料理が充実し、北陸から仕入れる鮮魚や割烹顔負けの小鉢など、美味ぞろいの酒肴に杯が進み、心地良く酔わせてくれる。
魚は金沢の漁師や、富山、能登の市場から直接仕入れ、刺身や昆布締めにして提供する。
「白そい(タヌキメバル)の昆布締め」¥1,750。
香ばしくカラッと揚げた「小海老のかき揚げ」¥1,200。
「ねっとり」「サクッ」の異なる食感が楽しい「山芋まんじゅう」¥1,150。
芋の滋味深さと香りも秀逸。秋冬は蓮根に切り替わり、そちらも人気。
都内の名店4軒で修業を積んだ店主・田島基行さんが打つ蕎麦は、喉越し滑らかでしなやかな東京らしい二八蕎麦。
5種類の蕎麦粉をブレンドし、“いつ食べても変わらない味”を提供する。
「冷かけおろし蕎麦」(¥1,600)は、宮城県産の磯風味豊かな海苔の上に静岡県産のしらすがたっぷりと。
辛み大根のツーンとした刺激が辛めのつゆと相まって、口をさっぱりと整えてくれる。
鯖節や鯵節を使ったつゆとの一体感も、蕎麦通たちを唸らせる。
随所にこだわりが光るが表現はさりげなく、接客は温かで気取らない。町蕎麦の洗練度までもが、広尾の上質さを物語っている。
店主に聞いた!広尾のイイ店
日赤通り沿いにある『鮨 真』は大将の仕事が丁寧かつ繊細で、つまみも握りも絶品。仕事への向き合い方と美味しさにいつも感動させられます。顔写真は恥ずかしいのでNG(笑)。
2.重厚な鉄扉の奥に佇む研ぎ澄まされた四川料理が、この街でいう“町中華”
『飄香(ピャオ シャン)』
四川料理の名匠が、新たな拠点の地に選んだのは広尾商店街を抜けた住宅街。
伝統的なレシピが生きた滋味深い逸品は本質を知る地元民の舌になじんでいる。
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東京屈指の四川料理の名店『飄香』が、広尾に移転してきたのは4年前。代々木上原、麻布十番と、これまで本店を移してきたのはいずれも住宅街や商店街を持つローカル感の強いエリア。
「街のムードと相性が良いと感じていた広尾は、以前から出店したいと思っていた場所でした」と、長年の夢を叶えたオーナーシェフの井桁良樹さんも語る。
そんな広尾店でいただけるのは、“老四川”とよばれる古の四川料理。
中国の伝統四川料理を伝える成都・松雲門派の継承者として、伝統の手法やレシピをベースに自家製調味料やスパイスなど、柔軟な発想を加えた新たな名菜が大人たちを楽しませる。
前菜に登場するスペシャリテの「焼きたてエッグタルト」。
バニラが香る卵液に、紹興酒とうにのソースをしのばせ焼く。その上に生うにをのせ、冬瓜の燕の巣をイメージ。
「干焼蝦仁」は、伊勢エビの頭からとったスープにヘチマ、大根の漬物、ナマコなどを合わせ、複雑な旨みと多様な食感を演出。
衣笠茸のムースが味わいに品格を添える。
“四川な夜”の幕開けは、いつもの泡がお約束
合わせるお酒は、シャンパンから特製の漢方酒までバラエティ豊かで、常連客をも飽きさせないラインナップだ。
華美ではないが体に染み入る本格中華は、広尾の大人たちの“いつもの味”として愛されている。
店主に聞いた!広尾のイイ店
広尾には美味しいイタリアンが多いですが、『ボッテガ』の「夏トリュフとフォンティーナチーズのタヤリン」は一度食べると忘れられないです。また食べたくなる味ですね。
3.扉の向こうはトスカーナ。飾らない郷土イタリアンが広尾では最上の普段使い
『ラ・トラットリアッチャ』
食感度高き大人で連日連夜賑わう
イタリアン激戦区・広尾で指折りのトスカーナ料理店。
現地で16年間過ごしたシェフの、食欲かき立てる現地の味を再現した料理の数々が地元民の日常に寄り添っている。
心地良い賑やかさと気取らない雰囲気が、まさに現地のトラットリア(食堂)を訪れたかのよう。
『ラ・トラットリアッチャ』は、イタリアで16年間過ごしたオーナーシェフ・河合鉄兵さんが現地での経験を詰め込んだ、本格トスカーナ料理の店だ。創業は2018年。
力強い実直なイタリア料理が“本場の味”を知る近隣住民や大使館関係者などの胃袋を掴み人気店に定着。
シエナやフィレンツェの郷土料理が中心で、内陸らしい肉が主役の“がっつりイタリアン”に食欲がかき立てられる。
ボリュームはもちろん、ひと手間かけたシャルキュトリーや煮込みなど現地の手法や食材を使った忠実な再現に感嘆。
希少ワインにもこの街なら出合える
トスカーナの食文化を味わいながらワインを流し込む、そんな陽気なディナーを過ごしたい夜にうってつけだ。
店主に聞いた!広尾のイイ店
『San Ciro』さんです。照明暗めでカウンターメインのお店です。お料理はもちろんスタッフとの距離感の近さや落ち着いた雰囲気だけど気軽な感じが好きです。
4.スパイスすら洗練されたインド料理店には、奥深き逸品を求めてローカルたちが通い詰める
『プリヤ』
小さな所作にもホスピタリティが溢れる
広尾の商店街で19年間看板を掲げる『プリヤ』は、地元民たちが日常的に通うインド料理店として親しまれる。
異国情緒を感じる本格派の味に誰もが虜になる。
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カジュアルなムードが一般的なインド料理も、この街ではひと味違い、広尾らしい上質さが漂っている。
『プリヤ』は北インドの宮廷料理が中心。いただけるのは、インドの一流ホテルで修業したシェフが作る約30種類のスパイスやハーブを使用した、カレーやタンドール料理。
カレーだけでも60種類というバリエーションに目移りしながらも、心が躍る。
肉汁溢れる骨太なタンドリーチキン
アーユルヴェーダの考えに基づいた体に優しい味わいで、ベジタリアン向けのバーベキュー料理など同店ならではの逸品も見つかる。
宮廷インド料理に相応しいホワイトクロスとサーブのしなやかさ、そこにスパイスの香りがするという不思議な感覚は、広尾だから均衡がとれている。
チャーミングなインド人スタッフの接客にも心が温まる。
店主に聞いた!広尾のイイ店
広尾のお気に入りの店は明治通り沿いにある『中華香彩JASMINE 広尾本店』。娘がここの北京ダックが大好きなんです。家族で美味しいものを食べたい時によく利用します。
5.本場の時空に身を委ね、料理とワインを愛でる夜が日常に根付いている
『インカント』
広尾で過ごす大人たちの中には、本場イタリアの夜を経験している人も多い。そんなゲストをも満足させる店が天現寺橋交差点で20年近く広尾を見守っている。
ここでは、料理とワインをじっくり愛でる、優雅な時間が存在していた。
「最近、ご近所の方がより増えました」と話すのはオーナーソムリエの竹石 航さん。
2007年開業の『インカント』は、最初の10年はプリフィクスが中心で、幅広い客層が本場の郷土料理目当てに訪れていた。
現在はコースに絞り、席間も広くした結果「ゆったり料理とワインを楽しみたい」という“イタリア的な優雅な時間”を求めるご近所さんが増えたとか。
その時間を彩るのが、イタリア各地で働き、現地でソムリエ資格をとった竹石さんが選ぶワインだ。
グラスは約50種と、通な大人も選ぶのが楽しい。ペアリングは約8種で継ぎ足し可という寛大さだ。
パスタやチーズは多種から選べ、解説も食通の心を躍らす。
ジェノベーゼソースを纏わせた「雲丹と茄子のカッペリーニ」。さわやかな香りの中にコルトゥーラの旨みがきいている。
シェフの芦野友香さんはイタリア各地の郷土料理に着想を得て、その温かみを残しつつ洗練されたひと皿へと仕上げる。
国産の鰻を使用したグラードの郷土料理「ボレート」は、白ポレンタを合わせ、味わいの一体感が抜群。
そこに合わせるワインは余韻まで美しく、連日連夜、広尾の大人たちを満たしている。
シェフに聞いた!広尾のイイ店
『メログラーノ』ですね。何年か前になりますが、ディナーでお伺いしました。シェフの後藤祐司さんが畑に出向いて収穫したお野菜をお料理に生かされていて、とても美味しかったです。
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