TOUGH COOKIES Vol.74

男女3人の旅だったはずが、帰りは2人に…。1人の女性が残ると決めた理由

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:「今日はたくさん甘えちゃお」再会した母の無邪気な一言に、娘が激怒した理由

「許してないよ、あの人のこと」

ルビーと母・明美を2人きりにして30分ほど。病室から出てきたルビーは、いつもの口調でそう笑った。

蔵王の森に囲まれた病院のカフェは1Fの受付の脇にあり、病室に向かう方向以外の3面がガラス張りで、この病棟が人生の最期を迎える患者を癒やすために作られていることを象徴するように緑に満ちていた。3人が座る窓際のテーブルに落ちる森の光は淡く優しく、8月だということを忘れてしまいそうになる涼やかなこの空間を、ともみはなぜかとても寂しく感じた。

「そんなに簡単に許せるわけないじゃん」

明るいルビーの声は人けのないフロアに良く響いた。カフェには3人と「この山で採れたハーブを混ぜたものなのよ」とローズマリーを中心にブレンドされたお茶を勧めてくれた店員の女性だけ。

甘い香りの元を聞くと、クロモジとエルダーフラワーからかしらね、と屈託なく教えてくれた彼女は、元看護師で定年退職をして3年になるという。近所にこの病棟が建てられたときから働き始めたのだと教えてくれてから何かとおしゃべりが止まらないおばさまなのだが、その賑やかさが不快にはならない、柔らかな空気をまとう人だった。

「うまい」

思わず口に出るほどに、ミチはハーブティーに魅せられたようで、1人2杯ずつくらいはあるからね、と女性が置いてくれたガラスのティーポットを手にとり、「モルダナ、ジェニパーベリー…」と湯の中で踊るハーブの種類を確かめ始めた。

「カクテルに使ってみたいんでしょ」と察したルビーが、茶葉を買えるかと女性に聞いた。母との雪解けか否か…というハードな話をしていたはずなのに、ミチもルビーも至極通常運転だ。

「気に入ってくれたのねぇ~」

と、喜び、「帰りに渡せるようにしておくわね」と弾むように戻っていく女性を見送ってからルビーは静かに話しを戻した。

「アタシの父親ってヤツがクズ男だったってことは、よく分かった。それで、あの人も病気とかPTSDとか…それももう疑ってない。けど、アタシが捨てられたのは事実だし。

クズ男に似たアタシの顔を見ると発作が出るから、離れなきゃいけないっていうのは仕方ない。でも、なんでアタシに真実を伝えなかったのかな?確かに6歳じゃ理解できなかったかもしれない。でも施設に入る時は8歳になってた。8歳でも無理だったとしても、10歳になったら?アイツはその努力をしなかった。

母親が自分の顔をみると苦しくなるって知ることが、アタシを傷つけると思って言えなかったとかさ、勝手な思い込みだし、子どもをなめすぎだよね。しかもあの人は、別れる時に『絶対に迎えに行く』って言った。でも来なかった。

親に捨てられるって、当たり前に地獄だよ。いらない子なら何で生まれたのかって、生きてく意味が分からなくなるんだから。自己肯定感どころか、自分の価値って何?って感じなわけ。

ここまで生きてこられたのは、マジでラッキーだったっていうだけ。施設のみんなも優しかったし、光江さんとかミチ兄とか――本当に恵まれてたんだよ。施設を出たあとはいつ警察に捕まってもおかしくないような生活してたし、捕まるなら捕まるでいいと思ってた。アタシはアタシのことがどうでもよかったから」

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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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