TOUGH COOKIES Vol.70

「これって脈あり?」買い出しのはずが、気付けばシャンパン。彼との近すぎる距離感とは

SUMI

公子の目が怒りに震えても、ともみは笑顔を崩さない。億単位の借金を抱え、もう後がない公子はみすみすYUMEを逃すことはしないはずだ。だから、公子には、YUMEの復讐を成し遂げるための、駒になってもらう。

― 狙うのは、真壁リオの失脚。

YUMEに違法な整形をすすめて人生を狂わせながら、今や世界的プロデューサーとして守られ、何食わぬ顔で栄光を手に入れ続ける、真壁リオの悪事を暴き出してやるのだ。



「復讐、やめられない?」


午前9時すぎ。リビングでノートPCを叩いていた大輝の呟きが、冷蔵庫からヨーグルトを取りだそうとしていたともみの耳に届いた。「どういうこと?」と振り返ってみても、イヤフォンをはめた大輝からの反応はない。

どうやら、脚本の台詞を声に出しただけだと分かるまで、ともみの胸は後ろめたさでざわついていた。

大輝とともみが暮らす部屋は表向き1LDKだが、実は図面に『S』と記される、4畳ほどの小さな部屋があり、大輝が脚本を書く仕事部屋として使っている。けれど昨夜は、リビングで夜通し作業を続けていたようだった。

YUMEと公子との再会に疲弊して帰宅したともみは、大輝が作ってくれた鶏肉と茗荷のレモンパスタを食べた後、早々に眠ってしまった。けれど、1時間ほど前にともみが目覚めた時にも、ベッドに大輝の姿はなかった。

起きてきたともみの分までコーヒーを淹れながら、「今日の夜が締め切りなんだ」と、大輝は疲れた目で微笑んだ。そしてともみの唇に軽くキスを落とすと、またリビングで原稿に没頭している。

ギリシャヨーグルトにブルーベリーと剥いたマスカットを添え、マヌカハニーをたっぷりとかける。大輝のお気に入りだという日本のガラス作家の器は、まん丸ではなく歪んだ楕円の両手に収まるほどのサイズ。透明に近い微かな水色が涼しげで、灼熱の8月にはぴったりだ。

作業の邪魔にならぬよう、大輝の分のヨーグルトをそっと置き、自分はキッチンのダイニングテーブル(というには、小さすぎるけど)で食べよう…と離れようとしたともみの手を、大輝が引いた。

「オレもちょっと休憩するから」

イヤフォンを外して、ポンポン、とソファーの隣を叩く。促されるままに座ると、大輝の表情が輝いた。

ヨーグルトをペロリと平らげた後、大輝は、「ちょっと充電させて…」とともみを後ろから抱え込み、肩に顔をうずめて動かなくなった。少し眠ってきたら?と提案してみても、「ここがいい」と断られた。室温はクーラーで快適に保たれているけれど、ピタリとくっつけばじわじわと熱が高まる。腰に回された手の力も弱くはなく、ともみは心配になった。

「…なんか、あった?」
「んー?なんで?」
「なんとなく?」

この記事へのコメント

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No Name
ともみとYUME、大輝、ルビー。それぞれが迎える正念場。やり方によっては修羅場にもなるのかな。
2026/07/07 07:064

TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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