「子役からずっと芸能界にいて、成功せずに終わった元アイドルなんて、なかなか仕事が見つからないのよ。今となれば恥ずかしいんだけど、当時の私には変なプライドもあったんだと思う。でも貯金だって永遠にあるわけじゃないし、生きてくための資金は必要だから、どんどん追い詰められて自暴自棄になって。
で、そんな時に声をかけられて。私に会いたいっていう人がいるから飲んでみないってところから、手っ取り早く稼げるギャラ飲みに参加するようになって。体を売るとか、愛人になるとか、違法なことは絶対にしていないけど、男の人を楽しませてお金をもらってたのは事実だから。
大金が集まる場所――裕福な男性ばかりの飲み会に好んで参加してた女だと印象付ければ、賠償金目的で事実無根の訴えをしたんだと、世間に印象付けるには十分でしょ。探せば写真の1枚や2枚は出てくるだろうし」
当時まだ、元アイドルというプライドを捨てきれていなかったともみは、迂闊に記録が残ることを徹底的に避けた。ギャラ飲みも、社会的立場のある男性側の秘密を厳守するためというルールの元、動画や写真撮影が一切禁止とされていた会にしか参加していない。でも。
― 結構、嫌われてたからなぁ。
元アイドルとしての知名度と、華奢で色白、でも胸はある…というルックスは男性人気が高かった。さらに群れない性格だけれど、誰よりも気が回るという器用さで、ともみはいつも飲み会での一番人気になっていた。
その上、仕切り役の女性に誰より気に入られ、皆よりもギャラが良かったことも災いし、随分と他の女性陣には煙たがられていた自覚がある。服に飲み物をこぼされる、転ばされる、など物理的な意地悪をしてくる子もいた。そんな女性たちに調べが及べば、きっとあることないことが証言として世に出てくるだろう。
「ま、私もあの頃は生きるのに必死だったし、今はもう、後悔もしてないんだけどさ」
― ギャラ飲みのおかげで、今の私があるんだから。
もう4年以上も前になるのか…ともみが参加したギャラ飲みに、宝という女性が無理やりに連れ込まれ。彼女を助けにきた大輝、そして光江と出会った。それがともみの未来を大きく変えることになったのだから、人生とは何が幸いするのかわからないものだ。
「ってことは…私がやろうとしてることは、ともみさんに迷惑をかけてしまうってこと?」
うな垂れたYUMEに、そうじゃなくて、と説明を続ける。
「むしろ、私の過去がYUMEの復讐に迷惑をかけることになりそう、って話だよ。それに、YUMEの過去も今も…丸裸にされてしまう。きっとYUMEだけじゃなくてご両親のことも調べ上げられるし、後ろめたい事実なんてなくても、その事実を向こうに都合が良いものに捻じ曲げられる。そして間違いなく――過去の傷を引きずり出されて、向き合うことになって、また苦しむことになるよ。…その覚悟は、ある?」
ゆっくりと顔を上げたYUMEの瞳は怯えていた。だから復讐なんてやめておこう。これ以上YUMEが傷つくのはイヤだから。そう止めるべきだと分かっている。なのに口から飛び出したのは、全く違う言葉だった。
「でも…その覚悟があるなら、手伝う」
「…え?」
「返り討ちにあって、ボロボロに負けちゃうかもしれないけど」
もう二度と、助けを求めるYUMEの手を振り払うことはできない。その衝動で、ともみはYUMEの手をぎゅっと握った。






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