表情筋が動かないランキングがあれば、日本トップ10には入るとルビーがからかうほど、ミチの表情は読み取りにくい。その変化に気づく人は極めて少ないが、ルビーはその数少ない一人だった。
「笑ってるように見えたなら…たぶん、ルビーに褒められたのがうれしかったってことじゃないか?お前が幸せそうに食ってるのを見ると、なんというか…ホッとすんだよ」
笑顔の自覚がないまま、自らを探るようにポツ、ポツと答えたミチに、ルビーはなぜだか黙ってしまい、はぁ~と大きなため息をついた。
「ミチ兄、そういうとこだよ」
「何がだよ」
「そういうの、ほんと良くないと思う」
「だから、何が良くないんだよ」
もういいよ、と呆れたような笑顔で「サンボルもカレーも大盛で」と言い放ったルビーにお代わりを出しながら、ミチは「適当に言ってるわけじゃねぇからな」と付け加える。
「新作のメニューを考えるとき、いつもなんとなく、お前の顔が浮かぶっていうか、ルビーはどんな反応すんのかな、って感じで試作していくからさ」
「…え…」
「オレの料理を、今、一番美味しそうに食ってくれんのはルビーだから。お前が喜ぶものを作りたいとは思ってるよ」
ぎゃああああああ!!と叫んでしまいそうになったルビーは、カレーをかき込むふりで、なんとかごまかした。
ほぼ告白じゃん?勘違いしてもいいヤツじゃん?と、不意打ちで射抜かれた胸が、ジンジンと熱を持つ。
― でも、これが無意識発言なんだよなぁ。
ミチはこういう男なのだ。ミチの“センサー”は、悪意をあぶりだすことには長けているが、自分に向けられる恋愛的好意には、限りなく無頓着だった。
ミチに言い寄るお姉さま方は少なくないが、彼はいつも、それらをさらりとかわすばかりで、相手が本気であることなど気づいていないのだろう。
― アタシの場合は…妹ポジションだから、っていうのもあるんだろうけど。
西麻布の女帝に拾われたという共通点。自分と似た境遇で苦しんできたルビーを、ミチが「放っておけない存在」として特別視してくれている…という自負はあった。それだけで満足していられれば良かったのに、気づけば恋に落ちてしまっていた。






この記事へのコメント
って事は最後ルビーの父を光江さんが呼んで来そうな予感。
明美さんがその時既にルビーを一番に考えていたならDNA鑑定で親子関係を明らかにした上で養育費を請求するとか出来なかったのかなと。ハーグ養育費条約により国際弁護人不要で手続きも無料で出来るケースも多いのに。