◆これまでのあらすじ
ニューヨーク転勤をすることになった総合商社勤務の遥斗。
付き合っていた彼女にフラれたことをきっかけに、新しい出会いを探すことに。
日本人で現地のコンサル会社に勤める莉乃と出会い、告白して、遥斗は莉乃と付き合えることになった。
▶前回:「家、行ってもいい?」デート中に女性からの思わぬ一言。嬉しいはずの彼が戸惑った理由
Vol.9 恋人との生活リズム
ピピピ…。
朝6時。目覚ましの音で遥斗は目を覚ました。
ブラインドからは、白く透き通った朝の光が室内に差し込んでいる。
その時背後でカタッと音がした気がした。
「莉乃?」
昨晩泊まりに来た彼女の姿を探すが、見当たらない。
やはり今日も先に出たのか、と少し寂しさを感じながら、遥斗はエスプレッソマシーンのボタンを押してコーヒーを淹れた。
莉乃の朝はいつも早い。
付き合って半年以上経つが、莉乃は休日でも6時には起きて、ランニングやジムに励む。
平日はさらに早く、5時前に起きて運動をした後シャワーを浴び、朝ごはんを軽く食べて6時には出社しているらしい。
その分仕事を終えるのも早く、早い時は18時には退社する。
一方遥斗も朝は早いが、莉乃ほどではない。ただ、莉乃と違って夜が遅い。
昔よりは緩くなったと言われているが、それでも日を跨ぐことも少なくない。
そのため、莉乃とはすれ違いの生活が続いていた。
会うのは基本的に週末。けれど、お互いに出張が入ったり、仕事や用事が入ったりすることもあり、毎週会えるわけではない。
二人とも仕事や自分の時間を大事にしながら、会う時は付き合いたてのように甘い時間を過ごす。
そんな関係が、遥斗の理想だった。
けれど、そううまくはいかなかった。
「今夜、一緒にご飯食べない?」
平日19時、珍しく莉乃からテキストが届いた。
最近週末も予定が合わずに会えないことが多く、遥斗も会いたいと思う。でも今日も遅くまでミーティングが入っている。
「ごめん、この後本社とのミーティングがあるんだ」
「それって、遥斗じゃなきゃだめなの?」
予想外の返信に、遥斗は戸惑う。
ミーティングに呼ばれているのに、それを断るという選択肢は余程のことでない限りない。
だが莉乃は「すべてに出席していたら時間がいくらあっても足りないじゃない。取捨選択しなくちゃ」と言う。
先日のデートも、沈んだ顔で現れたので理由を尋ねると、言葉に怒りの色を乗せながら言った。






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