◆これまでのあらすじ
ニューヨークへ転勤することになった総合商社勤務の遥斗。
付き合っていた彼女にフラれたことをきっかけに、新しい出会いを探すことに。
日本人で現地のコンサル会社に勤める莉乃と出会うが、お互い他も見よう、と言われる。
そんな時、元カノの美沙から連絡が来て…。
▶前回:「結局、日本人がいい…」ニューヨークに住んでいても、あえて日本のアプリで出会う理由とは
Vol.8 元カノとの再会
「来週、ニューヨークに行くんだけど、良かったら会えないかと思って」
別れて1年以上が経つ元カノの美沙からの連絡。
正直、このタイミングで彼女から連絡が来るとは、遥斗は思ってもいなかった。
美沙からの連絡を、心のどこかでずっと待っていたはずなのに、遥斗は冷静だった。
待ち合わせ場所は、美沙の泊まっているホテルの近くにある『Rosemary's Midtown』にした。
木を基調にした温かみのある内装で、イタリアンが好きな美沙にピッタリだと思って選んだのだ。
遥斗を見つけた美沙は、あの頃と変わらない親しい人に向ける笑顔で遥斗を見る。
懐かしさと昔の心地よさを思い出した遥斗は、自分も自然と優しく微笑んだ。
「久しぶりだね。どうしてる?」
「うん、なんとか。相変わらず忙しいけどね。美沙は?」
「まあ、それなりに。ちょっと昇進なんかしちゃったりして」
美沙はすまし顔を作るが、口の端から嬉しさが伝わってくる。
「え、そうなんだ!おめでとう!」
「ふふ、ありがとう。遥斗と別れて、あれから仕事を頑張ったの。今回の出張もね、私が進めていたプロジェクトが…」
久しぶりの美沙を見て、遥斗は少し新鮮なものを感じた。
美沙と付き合っていた時、美沙が仕事の話をイキイキと話していた記憶があまりない。
そう思って、ふと気がついた。
違う、そうじゃない。自分が聞こうとしなかったんだな、と。
いつも遥斗は自身の仕事の愚痴や、今いかに難しい案件に挑戦しているかなど、美沙に得意げに話していた。
遥斗としては、それは「あなたが付き合っている男はこんな頑張っているんだよ、すごいんだよ」と思ってもらうための一種のアピールだった。
けれど本当はただ、遥斗が美沙に聞いて欲しいだけだったのだ。
そして自分ばかり話して気持ちよくなっていたのに、美沙の話を自分から聞こうとはしなかった。







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