A2:まだ遊びたいし、急に重くなったので逃げた。
そして二度目は、食事からではなく飲みからにした。別に食事をしても良かったのだけれど、そこまでお金をかけるのはまだ違うかなと思ったからだ。
「ごめんね、忙しくて。本当は食事へ行きたかったんだけど…」
「ううん、いいの。会えるだけでも嬉しいから」
「朱莉ちゃん、今日も可愛いね」
「ありがとう…」
デートで女性が喜びそうな言葉を、取り敢えず並べてみる。でも朱莉はそんなふわっとした言葉に対しても、素直に喜んでくれるので、褒め甲斐がある。
すると、朱莉が急に真剣な顔をこちらに向けてきた。
「雄大くんって…今、彼女いるの?」
「いないよ。いたら朱莉ちゃんをデートに誘わないでしょ。3ヶ月前に別れたばかり」
今は、別れたばかりなので結構色々と遊んでいる。もちろん他の子とも何人か同時に会っている。
でも別に独身だし、朱莉と付き合っているわけではない。ただ今は、自由に遊びたい気分だった。
「じゃあ結婚してるとか?」
「それはもっとない。独身だよ。家見に来る?」
実を言うと、家には元カノの荷物がまだある…というより、実はまだ元カノが出て行ってない。だから家に来られると正直困るけれど、別に言うのはタダだ。
それに、きちんと別れているので嘘ではない。
「え、いいの?今度行きたい」
「わかった。掃除しておくね」
そんな会話をしていると、朱莉はさらに迫ってきた。
「私ももうしばらく彼氏いなくて。今年の年末こそはって思っているんだけどね」
「奇遇だね。僕たち…お互い募集中ってことだ」
「雄大くんは、恋人を作る気はあるの?」
「もちろんだよ」
朱莉は、彼氏が欲しくて焦っているようにも見える。それは年末が近づいているからなのか、純粋に寂しいのか…。
なんとなくこのままだとクロージングまで持っていかれそうだったので、軽めに切り上げて店を出ることにした。
しばらく歩くとけやき坂の綺麗なライトアップが見えてきた。朱莉はとても嬉しそうに、そしてどこか眩しそうにそのライトアップを見上げている。
「何度見ても、私、ここのライトアップ好きなんだ…。東京だなって感じられるから」
その点に関しては、僕も同意だった。毎年、毎回…。ここのライトアップは、なんだか特別な気持ちにさせてくれる。
そんなライトアップのもと、僕たちは坂を一緒に上って歩く。
「もう年末だねー…」
「歳を重ねると、一年があっという間だな」
「雄大くん、クリスマスと年末は何かするの?」
「僕?何も決めてないよ」
すると、朱莉はまたグイっと攻めてきた。
「…良ければ、二人で一緒に過ごさない?」
「朱莉ちゃんと?逆に、一緒に過ごせるの?朱莉ちゃん人気者だから、お誘い殺到してないの?」
正直、クリスマスとかそういう特別な日は大好きな人ができた時のために一応空けておきたい。
それにもし誰もいないなら、むしろ一人で過ごしてもいい。
ただ朱莉の中ではもう勝手に盛り上がっているようで、話がどんどん進んでいく。
「今年のクリスマスこそ、彼氏と過ごすって決めていたから嬉しいな」
― ん??彼氏?俺たち、付き合ってないよね?
そう思っていると、次は朱莉が手を繋いできた。
「どうしたの?」
「ううん。クリスマス、楽しみだなと思って」
綺麗なイルミネーションの下、手を繋いで歩く僕たち…。
― やばい、このままだと勝手に話が進みそうだ。
そう思い、内心焦ると同時に冷めていく。
朱莉が何か悪いことをしたわけではない。ただクロージングの圧がすごいし、“クリスマスまでに幸せになりたい!”という思いがひしひしと伝わってくる。
その圧に僕は少し押され…そしてここまでグイグイ来られると今このタイミングは僕からすると少し窮屈で、なんとなく返信もできず、どうすれば良いかわからないので未読にしている。
▶【Q】はこちら:2回デートして手も繋いだのに、LINEを未読スルーに。女のメッセージに返信しない男の心理とは
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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年末に女が別れを決めたワケ







この記事へのコメント
朱莉も、勝手な脈アリ判断してグイグイ攻めたら引かれる事くらい分かれよと思った。 逆に考えた時、まだ二度目のデートで好きになれるか微妙な男子から手を握られてポケットに入れられたらガッつき具合に冷めるから。