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ニューヨーク恋愛物語~商社マン遥斗の場合~ Vol.2

「話したいことがあるの…」数回デートして、そろそろ付き合えると思っていた彼女から衝撃の告白が

「日曜日はいつも、教会の後に家族とブランチをするのが習わしなの」


「初めまして。成瀬遥斗です」

遥斗は戸惑いながら挨拶をし、席に着く。


遥斗の緊張をよそに、家族はとてもフレンドリーに接してくれた。

父親はニューヨークで、高級インテリア雑貨の輸入販売業者をしているという。

起業家特有の情熱と親しみやすさがあり、数々の局面をくぐり抜けてきた者ならではの自信と風格をまとっていた。

遥斗が打ち解けられる雰囲気を作ってくれ、移民として起業した時の苦労話や、ニューヨークでの暮らしについて面白おかしく語ってくれる。

しかし、初めは和やかな雰囲気だったが、次第に質問が鋭さを増していった。

「日本の商社は世界でも注目されているけど、君の実際の仕事内容は?」

「どのくらい稼いでいるんだい?今後の給与形態は?」
「いずれ日本に帰るのかい?将来はどうするつもり?」

さらに、彼女の母がにっこりと言う。

「もし娘と結婚したら、あなたもカトリックになるのよね?」

笑顔の裏に探るような視線が刺さる。返答に窮する遥斗の心は、次第に重く沈んでいった。

そして翌週、今度はマヤから、教会に一緒に行かないかと誘われた。

― またあの両親と会うのか…。正直、気が重いな…。

マヤのことは好きだ。けれど今すぐ結婚など考えられないし、マヤの両親からの質問に、うまく返答する自信もない。

遥斗は仕事で疲れていることを言い訳に、やんわりと断った。

その瞬間、彼女の表情が険しく曇る。

「あなたは、私との関係を真剣に考えていると思ってた」

「いや、そうじゃなくて、君のことは大好きだし大事に思っているんだけど、まだ時間が必要で…」

必死に言い訳を並べてみるが、マヤの機嫌は直らない。

結局気まずい雰囲気の中、その日はキスもなく二人は別れた。

その後、遥斗が何度かメッセージを送っても、返事は途絶えがちになり、既読もつかなくなっていった。



数週間後。忙しさと気まずさから足が遠のいていたが、遥斗は久しぶりにランニングサークルに参加することにした。

そのとき、遠くに見覚えのある顔を見つけた。

遥斗が心を奪われてきたマヤの笑顔は、身長190センチほどもある屈強な男に向けられ、二人は並んで親しげに笑い合っている。

その後、遥斗には目もくれず、二人でランニングを楽しんでいた。

「別に、俺たちそんな仲じゃなかったし。うん、大丈夫…」

強がってそう呟いてみるものの、胸の奥が痛い。


走り終えた後、一人でセントラルパークを歩きながら、遥斗は思わずため息をつく。


― 恋愛って、難しいな…。

異文化の中での恋愛はとても新鮮で楽しく、そして難しい。それを肌で感じた数ヶ月だった。

ベンチに腰を下ろし、スマホを取り出す。


以前会社の先輩から勧められたマッチングアプリをダウンロードしてみる。

アイコンをタップし、プロフィールを登録した。

「よし…落ち込んでいても仕方ない。次だ次」

ニューヨークの風は肌寒かったが、前に進もうとする遥斗の背を、優しく押した。


▶前回:「あなたとは結婚できない」将来有望な28歳商社マンのプロポーズを、バッサリと断った彼女の本音とは?

▶︎NEXT:11月19日 水曜更新予定
マッチングアプリで出会ったバリキャリ女子。すぐに意気投合し、デートを重ねるが…。

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この記事へのコメント

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No Name
良いんじゃない、どう考えても合わな過ぎる相手だった訳だから。毎回ミシュラン高級店ではデート代もかなりかかる、そもそも親が望む結婚相手にはなれない。その前に、遥人は駐在員だからその内日本に帰る😆 カトリックになるんでしょって。
2025/11/12 05:2315
もしかして告白か?
って、デーティング文化(告白はない件含め) 少しは知っておけよとは思った。しかし初っ端から自己中と言うか色々と押し付けてくるワガママなカトリック女もキツい。
2025/11/12 05:5611
No Name
So bitch
2025/11/12 06:128
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ニューヨーク恋愛物語~商社マン遥斗の場合~

ニューヨーク。
眠らない街で、スマホを片手に恋を探す男がいた。

日本でも海外でも主流となったマッチングアプリはもちろん、最近流行っている「リアル」な出会いイベントにも顔を出す。

成瀬遥斗、28歳。総合商社勤務6年目。ニューヨーク駐在中。

その肩書もあって、マッチングアプリを開けば、メッセージは山のように届く。
しかし、出会いは星の数ほどあるが、本当に心を許せる“誰か”には、なかなか出会えない。

成功や出会いが次々と生まれるニューヨークで、遥斗の恋人探しの旅が始まる。

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