槙野智章がバーテンダー和田健太郎と語り尽くす
カウンターに槙野さんを迎えた和田健太郎さんは「ザ・リッツ・カールトン東京」の『ザ・バー』のヘッドバーテンダー。多くの賓客をもてなしてきたプロである。
「実は僕もサッカーをやっていたんです」と微笑んでグラスを差し出す。第一線を走る男ふたりによる対談が和やかに始まった。
独特の甘みをまろやかに調えたプロの1杯に感激
琥珀に輝く「グレンフィディック16年」の美しさに見とれる槙野さん。「味わえるのを楽しみにしていました」とグラスを傾ける。
槙野:いやぁー、美味しいですね。飲みやすいけど、奥深い。スイーツのような仄かな甘さと、ウイスキーの香ばしさが絶妙にマッチしている。そんなふうに感じます。これってストレートですか?
和田:いえ。違うんです。
槙野:じゃあ、水割り?
和田:水で割るというより、ストレートのウイスキーを、そのまま氷とミキシンググラスに入れて、バースプーンでステアすることで、少しずつ水分を溶かし込む技法を使っています。マティーニなどを作るときと同じ要領ですね。
槙野:プロのバーテンダーさんならではのやり方があるんですね。
和田:そうなんです。ウイスキーと水を滑らかに一体化させつつ、同時に冷やすことでもう一度本来の甘みを引き出してやる。言ってしまえば、このお酒の個性を再構築したというところでしょうか。
槙野:いいですね!再構築。好きな言葉です。そうした方法が、このグレンフィディックには合っていると思われたわけですね?
和田:そうです。この「グレンフィディック16年」はなんといっても甘さが特徴なんですが、しかし、その甘さは、ぼやけた、いわゆる、甘ったるさではなく、パンと引き締まった感じがします。ちょっと酸っぱくて、ほんのりと苦みもある。非常に輪郭のはっきりした三角形の甘み。
これは、おそらく、熟成の際に使ったバーボン樽に由来していると思います。バーボンとはご存じのように、トウモロコシを原料にしたアメリカのウイスキーですが、そもそもバーボンの樽って、オークで作って内側をじか火で焦がしてから使うルールがあるんです。その焦げが甘みになって出ている。
槙野:へぇー。そうなんですね。
和田:引き締まった感じは、きっと、ワイン樽の影響でしょう。
槙野:その結果、甘みが三角形になる。すごいですね。それって、どういうふうに感じるんですか?
和田:味わうと頭の中にボワッとその形状が浮かんできます。なんて言うんでしょう?甘みの角が丸まっておらず、シャッと尖っている。たるんでいなくて、背筋がシュッと伸びるような甘さ。
槙野:ほぉー。
和田:ステアしたのはその三角形をもう少し広げて五角形に近づけるイメージでしょうか。原液の味わいを緩めるというか、角を和らげて丸くしていくような……すみません、プロのバーテンダーなら、もっとしっかり言葉にできないといけないのですが(笑)。
槙野:いやぁ、すごいです。
名酒の醸造はサッカーのチームづくりと似ている
プロの味覚に驚く槙野さんだが彼もまたプロ。最上位の指導者ライセンス取得も視野に入れつつ、社会人リーグ「品川CC横浜」のトップチームで監督を務める。
和田:槙野さんも監督をやられていて言葉にできない難しさをお感じになったりしませんか?私が「一回飲んでもらったらわかる」と言いたくなるように(笑)。
槙野:確かに言葉にするのはムズいですね(笑)。けど、それを伝えるのが監督の仕事。言い方も考えています。起きた現象の指摘は誰にでもできますけど、そうでなく、今後すべきことを意識して伝えています。大事なのはチームの結果。そこに対して個々がどれだけ良さを発揮できるかですから。
和田:チームとしての結果自体は槙野さんご自身、どうお考えですか?サッカーって当然ですが、スポーツで、乱暴に言ってしまえば、相手より点数を多く取って勝ちさえすればいいと思うんです。
槙野:点を取ってナンボという部分はもちろん、ありますね。
和田:我々バーテンダーのように評価基準に形のない世界と違う。けど、プロである以上、エンターテインメント性も重要なはず。特に槙野さんのようにディフェンダーの楽しさを伝えようとプレーされてきた方が監督になるとどんなチームを目指すか気になります。
槙野:結論から言うと、監督としては観ている観客の方たちに喜んでもらえるサッカーを展開していきたいと思っています。
ひと口にサッカーといってもいろいろなカテゴリーとチームがあって、それぞれに指導者がいらっしゃり、考え方もいろいろあるわけです。その中で正解はひとつじゃないと僕は思っていて、勝つサッカー、魅せるサッカー、さまざまだからこそ多彩なチームができ、いろんなファン層も生まれる。そこがすごく重要だと思っています。
「品川CC横浜」で実践しているのはお金と時間をかけてスタジアムに来てくれた人たちに「また来たい」、有料コンテンツでも「また観たい」と思ってもらえるゲームをすること。実際に、このチーム、社会人なのに毎回何千人も動員する記録をつくっているんです。
和田:それは観に行きたいです。
槙野:ぜひ!結果はプロである以上、求めないといけないですけど、それだけでないプラスアルファの楽しさや嬉しさ、感動を含めたストーリーがゲームに乗っかってくれたらいいと思っています。
和田:ストーリーを乗っける!それは我々の業界でも大切です。
槙野:あ、ホントですか(笑)。
和田:まったく同じ言葉をお使いになると思って感動しました。我々もお酒にめちゃくちゃストーリーを乗っけますから(笑)。
今回の16年もアストンマーティンということで、あの『007』の主人公が自然と頭に浮かんで。じゃあ、映画の中で彼はどんなふうにウイスキーを飲んでいたか、こんな感じだったはずという追想から始めました。
槙野:なるほど。
和田:その上で、少しやんちゃなプレースタイルの現役時代から指導者の道を歩まれる中で落ち着いたダンディーな大人になっていく、槙野さんの物語も同時に重ね合わせています。氷となじんで柔らかくなったグレンフィディックが似合う大人の男のストーリー。
槙野:チームビルディングの話をしましたけど、ウイスキーも同じだと思うんですよね。好きになってまた飲んでもらうために作り手の方もいろいろ試行錯誤される。
和田:グレンフィディックにも、今回の新しい16年の他15年というラインナップもありますね。
槙野:軌道修正して違う方法を試したり、ゼロから再構築したり。で、多分、完成ってない。もし、自分でこれが最高と決めてしまったら、もうそれ以上は生まれないんですよね。それはサッカーも同じだと思います。
全部試したと自分では思っても、ふと周囲を見渡すと、また違う考え方があることに気付かされる。自分のやり方だけに固執して足を止めたら終わりなんですよね。やっぱり、サッカーとウイスキーってどこか似ていますよ。
今回の対談場所は、五感で心地良く癒やされる天空のアートバー『ザ・バー』
45階のロビーフロアに広がる開放的なメインバーで、ホテルの顔。
足元からライトアップされて幻想的なオーバル型のカウンターに加え、クラシカルで優雅なソファ席も充実しており、空間全体がひとつのアートのような構成になっている。
全面ガラス張りになった窓からは東京スカイツリーの他、国立競技場と神宮の森も眼下に収められて壮観。水上ステージでは毎夜、音楽が奏でられ、五感で憩う天空のバーとして圧巻の存在感を放っている。
■店舗概要
店名:ザ・バー
住所:港区赤坂9-7-1 ザ・リッツ・カールトン東京 45F
TEL:03-6434-8711
営業時間:15:00~23:30、金15:00~24:00、土12:00~24:00、日祝12:00~23:30
定休日:無休
席数:カウンター8席、テーブル42席
クイズに答えると抽選で、グレンフィディックの故郷、スコットランド旅行が当たるキャンペーン実施中。
■商品概要
「グレンフィディック16年」
英国を代表するブランドがタッグを組んで誕生。3種の異なるオーク樽で熟成させた原酒をマリアージュすることでメープルシロップのような香り、シルキーな口当たりと贅沢な甘みを実現。
希望小売価格¥15,906(700ml)。9月29日(月)より数量限定で発売中。
飲酒は20歳を過ぎてから。お酒は適量で。飲酒運転は法律で禁止されています。
Glenfiddichは登録商標です。 ©2025 William Grant & Sons Brands Ltd.
Photos/Kazuhiro Fukumoto, Styling/Kim-Chang, Hair&Make-up/Tetsuya Tanaka, Text/Itaru Tashiro