A1:子育てに関して、他人事すぎる
鉄二と出会ったのは、知人が開催した食事会だった。
あまり期待せずに参加したが、鉄二を見た瞬間、何か感じるものがあった。
日系証券会社勤務でスマートな印象の鉄二は、かっこよくごく自然に惹かれていき、彼からの強烈なアプローチもあり、交際へと発展していた。
当時29歳だった私は日系のコンサル会社に勤めており、仕事も楽しく恋愛も順調で、まさにノリに乗っていた気がする。
そして交際から2年経った時。ハワイで鉄二がプロポーズをしてくれた。あの時は嬉しくて嬉しくて、泣き崩れたのを今でも覚えている。
そして籍を入れてすぐに妊娠し、1年後に娘の華恋を出産…と、順調すぎるくらいに私たちの結婚生活は過ぎていった。
結婚すれば、何かしらの関係が変わるもの。
夫婦だから多少のケンカがあっても、仕方ないと思う。それに結婚生活が長くなるにつれて、違和感が生まれてくるのも当たり前のこと。
…そう思っていた。
しかし子育てとなると、話は変わってくる。鉄二は華恋の子育てに関して、どこか他人事だった。
薄々感じてはいたけれど、華恋の小学校受験の時に確信した。
「華恋は女の子だし、早めに受験させて、エスカレーター式で上まで行かせた方が絶対にいいと思うの」
私は、華恋に受験をさせたかった。しかし一方の鉄二は自分自身も公立出身のため、受験は不要だという。
「別に公立で良くないか?」
「公立と私立だと全然違う。絶対に、私立へ行かせたいの」
ここまでは良かった。しかし次の言葉に、鉄二の本音が見えてしまった。
「そんなに言うなら、夏希が受験すれば?僕は、金は出すけど」
― ……は?
呆れて何も言えなかった。そして怒りと同時に、悲しみも込み上げてくる。
「何その言い草。あなたの子どもでもあるんだから!」
結局、男なんてこんなものなのだろうか。一緒に子育てをしているはずなのに、どこか他人事。「金出しているからいいだろ」的な態度も腹立たしい。
「もちろん僕の子で華恋の幸せを誰よりも願っているけど…。日中は、現実的に僕は見れないし。それは夏希の役割でしょ?」
私は結婚して、華恋が生まれてから仕事を辞めた。
辞めなくても良かったかも、と今なら思う。
子育てと仕事の両立が難しかったこともある。でも何より鉄二の「母は家にいろ」的な無言の圧に耐えられなくなり、辞めることになった。
最終的には自分で決断したことなので、このことで鉄二を責めるのは違うと思っているから、私は何も言わないようにしていた。でもこんな言い方をされて、心が腐らないわけがない。
「なんでそんな言い方しかできないの?好きで仕事を辞めたわけじゃないのに」
「そうかもしれないけれど、実際に稼いでいるのは僕だし、僕の方は、仕事は辞められないよ」
「仕事辞めて、なんて一言も言ってないでしょ…」
このケンカはヒートアップしたが、最終的には鉄二が折れて華恋は小学受験をすることになった。
そして必死の頑張りもあって志望校に見事合格できた華恋。
「華恋、よく頑張ったな〜」
合格した当日、鉄二は華恋を抱えながらそう言った。でもそれを見て、私の中で安堵の気持ちとともに、鉄二に対する違和感はさらに膨れ上がっていった。
この記事へのコメント
いやー、そう思う事自体間違っていると感じました。夫のために妻がわざわざ「お母さん」になってあげる必要はないし、育てているのではなく甘やかしていただけですよね。出張の準備?そんな自分の事は自分でできるでしょうとスルーでOK。冷蔵庫のビール切れてるかも? → ラス1取り出した人が補充しないとね で放置。冷えたビールが一つもなければその内自分でやるようになります、出掛ける準備出...続きを見る来てなくて困ったなら次から自分でやらないとと思いますよ幼稚園児でも。 結婚後は家族になるので男女の些細なすれ違いなんて言ってられない。適宜話し合いお互いの意見を尊重しながら生活しないと夫婦関係は破綻してしまうと思います。勿論夫も悪いけれど、妻にも原因は多々ありました!