港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。
女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。
タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。
▶前回:「まだ好き…」自分を振った彼と2ヶ月ぶりに再会したら、意外な展開に…
「もしかして、大輝さんは今私に…告白的なこと、してる、ってこと?」
途切れ途切れに呟くように聞いたともみに、大輝が…「たぶん、そう、です」とはにかんだ。
― つまり、大輝さんが、私を、……好き?
いやいやダメダメ。私、冷静になれ。ともみは、その場をピンク色に染めてしまいそうなトキメキを必死で抑え込み、大輝をキッと睨んだ。
「何それ。なんかムカつくんですけど。私、きっぱりフラれたよね?」
怒りを装ったその声が微かに裏返ってしまったことが恥ずかしくなり、ともみは下を向いたが、言葉は止まらなかった。
「こっちはフラれたことを受け入れて、必死で友達として始めようとしてるのに。大輝さんにこの2ヶ月に何があったか知らないけど、自分を慰めてくれる都合のいい女がいなくなったら、寂しくて惜しくなっちゃった?そうなら、なめないで、って感じなんだけど」
一気にまくしたてながらも、期待してしまう矛盾が悔しくて情けなくて、ともみは顔が上げられなくなった。
25時を過ぎた明治通り沿いのガードレールに座る2人の前を、中年男性が3人、通りかかり、あれ~ケンカか?兄ちゃん、女の子を泣かせちゃだめだよぉ~と絡んできた。
― 泣いてなんかないし。
酔っ払いの言葉に過敏に苛立ち、睨むように顔をあげたともみに、「おお~お姉さん美人だねぇ~オレたちと飲みに行こうよ~」と、中でも一番泥酔した様子の男性がふらふらと近づいてきた。
大輝が立ち上がり、ともみを自分の背に隠すと、「お兄ちゃん、でかっ」と酔っ払いならではの大笑いをして、絡むことに飽きたように立ち去った。彼らの笑い声が聞こえなくなるほど遠ざかると、大輝が小さく溜息をついた。
「…なんか、ごめん」
困った顔で見下ろされると、ともみにも気まずさがこみ上げる。私も言い過ぎたと謝ると、大輝が「ともみちゃんの反応は当然だから」と申し訳なさそうに続けた。
「自分でも、都合のいいことを言ってるのはわかってる。でも、もう少しだけ、話させてもらってもいいかな」
この記事へのコメント
メグの精神状態が心配だけどきっとミチと一緒に居れば大丈夫かな…