冷たいひと皿が、体だけでなく、心まで整えてくれることを、私たちは経験的に知っている。
つるりと喉を通る涼麺に、かき氷が舌の上で儚く溶ける瞬間に心ほどける。“食べて涼をとる”という、夏ならではの贅沢。
この季節にこそ食したい、涼感グルメを厳選してご紹介。今回は、「冷やし麺編」だ。
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1.玉露と苦丁茶の一滴で、味が転調。涼やかな余韻を残す一杯
『茶禅華』の「青山緑水」
南麻布の閑静な住宅地に佇む『茶禅華』。川田智也シェフが、和と中華の要素を巧みに調和させた“和魂漢才”の料理を供する名店だ。
「季節の食材のおまかせコース」の序章を飾るのが「青山緑水」。冷たい上品な鶏スープに、極細の三輪素麺。そして一滴、深緑の液体が浮かぶ。これこそが味の決め手。太白胡麻油に、京都の玉露、さらに四川省の新芽のみで作られた苦丁茶を合わせたものだ。
まずはスープをひと口。滋味深い旨みが静かに広がる。次に麺をそのスープに絡めてすすれば、玉露の甘み、苦丁茶の苦味、太白胡麻油のコク、素麺の風味が一体となって、豊かな美味に昇華する。そして、油が全体になじんだスープを味わえば、口いっぱいに清々しい余韻が広がる。
深緑の森に湧く清水が、やがて大河となるように、この一杯がコースの幕開けにふさわしい期待感を高めてくれる。
― 推薦者 ―
ライター・甘利美緒
「潔い佇まいと、驚くほど清涼感に溢れた味わいに心を打たれました。料理に満ちる川田シェフの“真味只是淡”を追求する姿勢も暑さを忘れさせてくれます」
2.透き通る氷の器にたゆたう麺。すだちと出汁の清涼感が静かに広がる
『肉屋田中 銀座』の「氷器 酢橘冷麺」
料理が運ばれた瞬間、「おぉ」と驚きの声が漏れる。器が、まさかの氷でできているのだ。
『肉屋田中 銀座』の料理は、肉師・田中 覚シェフが厳選して仕入れる、最優秀賞神戸牛や純但馬系特産松阪牛といった最上級和牛を堪能させる「おまかせコース」のみ。
日本一の和牛を使うからこそ、旬の素材をふんだんに盛り込んだ一品料理も、メイン前に供されるこの「氷器 酢橘冷麺」も、一切の妥協がない。
天然氷をゲストの目の前で削り出し、器をその場で完成させるという演出もまた一興だ。そこに盛られるのは、すだち果汁、利尻昆布、鰹節、牛の出汁を合わせたスープのシャーベットと歯切れよくつるりとした喉越しの麺。ひと口ごとに、奥深い旨みと圧倒的な清涼感が広がっていく。
この一杯があるからこそ、この後に続くメインの味わいが、より一層引き立つのは言うまでもないだろう。
― 推薦者 ―
フードライター・小寺慶子
「“世界一の肉”と同じぐらい強印象なのがこの冷麺です。氷の器はルーヴル美術館に収蔵されてもおかしくない美しさ。キリリと研ぎ澄まされた涼味に心酔します」
3.和出汁とからすみが重なり、冷たさの中にきりりと旨みが立つ
『PRIMO PASSO』の「冷製カッペリーニ」
ひと口すすれば、涼やかな酸味と魚介の旨みが押し寄せ、からすみのコクが後を追う。
「アサリと昆布の出汁に、すだちの酸味、さらにカツオの香りとコク。冷製でも味の輪郭ははっきりと残したかったんです」と『PRIMO PASSO』の藤岡智之シェフ。
ナポリの三ツ星『Quattro Passi』でパスタ番をまかされ、日本に戻って開いた自身の店で掲げたテーマは、「日本人だからこそ作れるイタリア料理」。それを体現するのが、全12品中5品をパスタで構成する「おまかせコース」だ。
なかでも印象深いひと皿が、3品目、揚げピザの後に出されるこの「冷製カッペリーニ」。 あえて温かい料理の直後に供することで、温度差の妙を楽しませるという。
和出汁の奥行き、柑橘のきりりとしたアクセント、そしてからすみの余韻。ひと口ごとに、和と伊が重なり、驚きと笑みが同時に広がるひと皿だ。
― 推薦者 ―
フードライター・小石原はるか
「季節により内容は変わりますが、7~8月に出されるのが冷たいパスタ。出汁の味わいに、からすみの旨みを重ねた構成の巧みさに唸らされます」
4.モチモチ麺に、香ばしい肉味噌が絡む。旨みと食感の多重奏
『月居 赤坂』の「炸醬面(ザージャンメン)」
コースの終盤に船倉卓磨シェフはリズミカルに生地をこね始める。〆の麺を打つためだ。数分後、供されたのは幅1センチほどの手打ち麺に、香り立つ肉味噌、きゅうりや紅芯大根などの具材。華美な盛りつけではない。
まるで中国の家庭で出されるような素朴なひと皿。だが、それこそが『月居 赤坂』の船倉シェフの真骨頂。“奥深い中国の家庭料理を、日本の食材で再構築する”という信念が凝縮されている。
まずは香辛料で風味を移した油で、甜麺醤など数種の味噌をじっくり炒め、そこに豚バラを合わせてコクを出す。具材には、きゅうりや紅芯大根のほか、発酵高菜と枝豆の炒め、しいたけなど多彩な食感と風味が。
強力粉と水だけで打ち上げた力強い麺に、好みの量の具をのせ、一気に頬張れば、肉味噌の濃厚な旨みに野菜の清涼感が絡む。〆とは思えない満足感に思わず「おかわり」を欲してしまう。
― 推薦者 ―
フードライター・森脇慶子
「ムチムチの手打ち麺に絡む肉味噌は香ばしく甘さ控えめ。そこに多彩な具材の食感や味わいが軽快さを添え、飽きずに食べられます」
5.ひと口で旨みの沼。炙り香るからすみと蕎麦の誘惑にハマる
『蕎麦割烹 橙』の「からすみそば」
舌に触れた瞬間、炙りの香ばしさとパウダーの繊細さが広がる。『蕎麦割烹 橙』の「からすみそば」は、まさに静かな高揚を誘うひと皿だ。
自家製の麺つゆを絡めた蕎麦に程良い塩気のからすみを贅沢に盛る。炙られたスライスと、口当たりの良いパウダー状の2種を重ね、蕎麦の香ばしさと一体となるその構成力は見事のひと言。ひと口食べるごとに奥行きが増していく。
この品を手掛けるのは、蕎麦打ちの名手・高橋邦弘氏の下で腕を磨き、中国料理の巨匠・脇屋友詞氏と『蕎麦割烹 橙』を立ち上げた森 大和シェフ。
同店はディナーに3種の蕎麦コースがあり、どのコースも1品目はもっちり食感の「あげそばがき」、2品目には中華香る「蕎麦の実しゅうまい」で意表を突き、3品目にこの「からすみそば」が登場。続く「せいろ」や「温かいおそば」の前の、コースのあいさつといえる涼麺だ。
― 推薦者 ―
東カレ編集長・日紫喜康一郎
「からすみ好きとして外せない、超ラグジュアリーなお店の逸品。蕎麦の香りとからすみの塩気のバランスが絶妙で、私が夏に求める味です」
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