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TOUGH COOKIES Vol.22

「彼氏に秘密があるから、結婚できない」念願のプロポーズをされた30歳女が、躊躇するワケ

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。

▶前回:外から見たらセレブ夫婦だけど、結婚生活が破綻して10年経っても離婚しないワケ

Customer5:優しい恋人からのプロポーズを受けられない秘密がある兵藤美景・30歳


美景(みかげ)にしがみつくようにして泣きじゃくっていたルビーが、ようやく泣き止んだ…と思ったら、今度はしゃっくりが止まらなくなった。

ともみが苦笑いしながら差し出した水を、ルビーはバツが悪そうに受け取り、美景の真横ではなく、ひとつ間を空けて座った。

言い過ぎたと思っているのか、美景と目を合わせることも気まずい様子で、うなだれたままのルビーが、ともみはなんだかとてもかわいく見えた。

「怒ってくれて…ありがとね」

そう微笑んだ美景の目は濡れていなかった。妹のように可愛がっているルビーにあれだけ感情をぶつけられても、もらい泣きすらしなかったようだ。

― この人も、泣けない人、なのかもしれない。

かつての自分が——光江と出会う前のともみがそうだったように。人前で泣くなど弱みをさらすことだと、痛みを押し殺し続けるうちに、胸の奥のどこかが麻痺して、涙は出なくなるものだ。

― 強くなりたかったから。

もっと気楽に生きるべきだと諭されたこともあるし、ただの強がりだと笑われたこともあるけれど、当時のともみには必要だったし後悔もしていない。

「さっきルビーが怒っていたことなんですが、私も…」

そのタイミングで、大きなくしゃみをしたルビーが、ごめん!とあたふたと慌てた。それを笑いながら、ともみは続ける。

「ルビーは、美景さんが自分を“汚れきった女”と言ったことに怒った。私もその表現にはムカつきます」

美景が唇の端を上げ、自虐的に笑った。

「ですよね、不倫相手から出資してもらってた女なんて嫌われて当然…」
「その笑い方もムカつきますね」

強くなったともみの語気に、言葉を遮られた美景の表情が固まる。

「自分で自分をバカにしたら楽になれるんですか?“汚れ切った女”なんて、随分安っぽい表現で——自分に罰を下した気分にでもなってるんですか?」

この記事へのコメント

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No Name
キャバクラなんて....とか自分の過去を責めてると同時に、夜のお仕事してる女性全員をバカにしてる。
確かにともみの言う通りだわ。
2025/07/22 05:3620Comment Icon3
No Name
あんまり応援出来ないや、理想も見栄も含めて一度全部失って一からやり直したらどうだろう?
いい商品作ってるなら一旦顧客は離れても徐々に戻ってくる。
2025/07/22 06:1315Comment Icon1
No Name
美景さんの努力はもちろん理解できます。ただ世間からの目を気にし過ぎて女性起業家としてこう思われたいとかそういう「理想」が高くなり過ぎていたのは事実ですよね。
2025/07/22 06:0213Comment Icon1
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TOUGH COOKIES

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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