A1:婚約破棄直後という、タイミングが良かった。
祥子と出会ったのは、僕が婚約破棄をしてからすぐのタイミングだった。
実は5年も交際していた春香というモデルの女性と婚約をしていた僕。
ただ彼女の実家の状況や家庭環境の問題などがあり、婚約はしたものの結局破談になってしまった。
正確に言うと、僕の実家が最後まで結婚を認めず、揉めているうちに結婚の話が立ち消えになってしまった…という感じだ。
しかし5年も付き合っていたので、ほぼ家族同然だった。春香が隣にいるのが当たり前で、この先もずっと一緒にいると思っていたから、婚約破棄は結構堪えた。
ただこの婚約破棄で、学んだことがある。
たしかに春香は綺麗だったし、外見は完璧だった。一緒にいて楽しかったが、学歴は高い方ではなかったし、育ちも良い方ではなく僕の周りにはいないタイプだった。彼女としては良いけれど、いざ結婚となると、実はこういうタイプの女性とは合わないのかも…ということだ。
そんな矢先に、食事会で出会った祥子。
都内出身で四大卒、見た目も悪くないし身長も高い。そして日系大手航空会社の客室乗務員なので、ある程度英語も話せる…と、“ちょうど良い”感じだなと思った。
そして何度か食事をしていくうちに、意外に地味で金遣いも荒くなさそうだと知る。
なぜなら本人が、いつも“堅実”アピールをしてきたから。
デートの時は目立つようなブランド物は身につけておらず、毎回1軒目で帰る祥子。
なので、見た目よりも案外真面目なのかもしれない…と僕は思い始め、その意外性に僕はどんどん惹かれていった。
だから三度目のデートで「コンラッド東京」に入るバー&ラウンジ『トゥエンティエイト』で会った時、僕は自分が感じたことを素直に本人に伝えてみた。
「祥子ちゃんって、意外だよね。派手そうに見えるのに、あまり店とか知らないし、実はとっても家庭的な感じもするし…しかもご実家もちゃんとしているって最高だよね」
「まぁ実家は一応、都内にあるけど…でもそうなの。みんな、外見で判断してくるけど、実は家に引きこもって動画とか見るのが好きだし」
「それがいいよね」
「本当に?私生活が地味すぎて、恥ずかしいよ」
港区で生活をしていると、また僕らの業界にいる男性を捕まえようと血眼になっている、金目当ての女性をごまんと見てきた。
でも祥子は、多少の計算もあるとは思うけれど、33歳という年齢なのか、落ち着いて見える。
「でも鉄二さんも、意外と言えば意外かな。お仕事すごく忙しそうなのに、こうやって会う時間作ってくれて…嬉しい」
「それは、俺も会いたいなと思ったから」
「そうなの?嬉しい」
「実は最近、婚約破棄してさ…だからこのタイミングで祥子ちゃんに会えたのは運命なのかなって。親とかにも会っていて、式場も予約していたから結構辛くて」
どうして、この話を祥子にしたのか自分でもわからなかった。でもこの祥子の対応で、僕は何かを決めたかもしれない。
「そうなの?それは大変だったね。でもご縁がなかったのかも…それに、その彼女のおかげで、こうして鉄二さんに会えたからむしろ感謝しないと♡」
― あぁ、この子いいな。
そう思った。結局この後数回会い、僕たちは交際することになった。
そして交際開始と共に、決めていたことがある。「もう無駄な交際期間はいらない。付き合うなら結婚だ」と思っていた。
この記事へのコメント
そういう人からも相手にされずに、39歳まで来たのは誰?
まじで偉そう。腹立つこのジジイ、何様だよ。