A2:「ありがとう」「ごめんね」が言えない男だったから。
付き合いたての甘くて楽しい時間なんてあまりなく、交際直後から、私たちは頻繁にケンカをすることになる。
意外にも潤は頑固で、自分の意見を曲げない。そして何のプライドなのか、連絡はいつもギリギリだ。
「潤さぁ…。なんで昨日、LINEの返信をくれなかったの?」
「スタンプで返したじゃん」
「違うよ、私はちゃんと返信が欲しいの。別にどうでもいい連絡じゃなくて、“明日何時に会う?”って、必要なラリーだと思わない?」
毎日LINEしてほしいとは言っていない。ただ、次の日の会う約束の時間を決めたいだけなのに、それすらままならない。
「忙しい時にそう言われても…無理だよ。こっちは忙しいんだし」
「返信に、どれほど時間がかかるっていうのよ」
そして、こんなことで怒っている自分も嫌だった。普段は滅多に人とケンカしないのに、なぜか潤とはいつもケンカになる。
すぐ相手に指摘してしまう自分も嫌だけれど、言わないと自分の気持ちは伝わらない。それに、直してほしいところを伝え合うことは、良い関係を築くために必要なことだと思っている。だからつい言ってしまう…という、完全に悪循環だった。
そして何より、ケンカした際に潤が放った一言が、彼との付き合いを考えるきっかけになった。
「潤って年下だけど、もっと大人かと思ってた」
「それを言うならこっちのセリフでしょ。彩花のほうこそ年上っぽくなさすぎ。それにこんなんじゃ、結婚とか考えられないから」
どれほど潤が、真剣に言っているのかは分からない。でも31歳と、33歳。
結婚を考えられない相手と、今付き合っている暇はあるのだろうか。貴重で大事な時間を彼に使って、本当にいいのだろうか。
私の中で、潤のこの発言で何かが弾けたのかもしれない。
「あっそ。そういう言い方、やめたほうがいいよ」
そしてこれ以降。一歩引いて自分たちの関係を見てしまうようになった。
「なんでこんなにケンカするんだろうね、私たち」
「なんでだろう…まぁ仲良くやっていこう」
「そうだね、カッとなってごめんね」
そうなると、色々と見えてくることが多い。まず、潤は絶対に謝らない。自分の非を絶対に認めない。
そしてもう一つ。彼は「ありがとう」が言えない人だった。
週末になると、どちらかの家でご飯を作って食べることが多くなっていた私たち。大概私がご飯を作っていたけれど、潤は出された料理を当たり前のように食べるだけで、「ありがとう」「美味しい」など、一切ない。
「潤、これ美味しい?」
「うん」
「潤が今日はうちに来るから、朝から鶏肉を特製のタレに漬け込んでいたんだよ。だから味が染みているはず!」
潤が来るから、朝から唐揚げを仕込んでいた。でもそれに対しても、何も言わない潤。
「そうなんだ」
そう言ったきりテレビに集中し始めた潤を見て、私はもう、ただただ幻滅していく。
別に「すっごく美味しい!!ハニー、愛してるよ!」なんて言葉は求めていない。
ただ、「ありがとう」と言って欲しいだけ…。そう望む私は欲張りなのだろうか。
「潤、食べ終わった?」
「うん。洗い物は僕がするよ?」
「本当に?ありがとう」
私は積極的に「ありがとう」も、自分が悪いと思ったら「ごめんね」も言っている。でも、潤が生きてきた世界線にはこの言葉は存在しないのかもしれない。
またここで口うるさく言ってケンカになるのも嫌だし、何よりも、もう30歳を過ぎている。
― 「人は変わらない」と言うしな…。
結婚もできない、ケンカばかりで、「ありがとう」も「ごめんね」もない…。そんな相手といて、本当に良いのだろうか。
好きという気持ちはあるものの、本当に彼と付き合い続けるのが良いのか分からず、私自身も迷っている。
▶【Q】はこちら:年収1,200万、M&A会社勤務の31歳独身。一見完璧なのに、彼氏として圧倒的に足りていないコト
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
▶NEXT:7月5日 土曜更新予定
実家暮らしはあり?
この記事へのコメント
まずTVを消す。そして普通に「今朝から下味付けておいたんだ!白ダシ風味にしてみたんだけどどうかな?」って聞けば何か答えるでしょう🤣 「大根おろしかマヨネーズ要る?」とか。それでもスルーされたら手料理作らず来週から外食にしようって言えば? 色々と粗が目立って今週はつまらないテーマだった。
It’s sooooooo good ! I love you honey ♡
なんて言葉は求めてないとか言いながら、本当は言って欲しかった的な?