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武蔵小杉のタワマンには、マウント合戦がない!?港区からコスギに越した女が知った、自分に必要なコト

星付き店のディナーもいいけど、近所のイタリアンが心地良い


無事に陸が生まれてからは、初めての子育てに右往左往する毎日。そんな傍ら、耕太は子どもが生まれる前と変わらず遅くまで仕事をし、家事も私任せだった。その姿にイライラが増し、キツくあたっていた。

子育ても夫婦仲も微妙で疲弊していたとき「たまにはパパに預けてちょっとだけリフレッシュしようよ」と、理沙さんに誘われて久しぶりに夜に出かけることになった。

とはいえ、昔みたいな夜遊びではなく、すぐに帰ることができる近所のイタリアンでのママ会だ。それでも久しぶりの解放感に、気分は爽快だった。

「ここ近いしコスパもいいし最高だよ。まだ授乳中だから泡は飲めないけどね!」

ノンアルコールで乾杯しながら、早速話を聞いてもらうと驚くほど心が軽くなっていった。そのときリフレッシュタイムは、いまの自分にとても必要だったんだと知る。

何よりも理沙さんの気遣いと優しさがありがたかった。自分でもびっくりするほど、誰かに弱みを見せられるようになっていた。昔の自分は、年を取るほどなかなかバリアをはずせなかったはずだ。子どもを産んだことがそうさせたのか、またはこの街特有の、安心感からなのか……。

どこの街にでもあるママ同士のコミュニティ(情報網)は、武蔵小杉にもたくさんある。“グランツリー”や近所のカフェにはいつも、さまざまなママ軍団がいる。

子どもを産むまでは、そんなママの集まりには何となく偏見もあったけれど、武蔵小杉のママ同士は、マウントの取り合いや“敵意”を感じることはなかった。お互いを探り合うというよりは、純粋に子育てにまつわる情報を共有し合い、助け合うという“同志”に近い感覚だ。

子どもが成長すれば、中学受験や塾選びなどにまつわる話も出てくるため、口にせずとも「隠れヒエラルキー」なども存在しているだろう。それでも、ギスギスとした関係性がないのは、港区のような見えを張る文化がなく、突き抜けた洗練や極端な富裕層がここにはいないからだろう。

ほどほどに余裕のある層であり、所得の格差が大きく開かない、だから肩肘張らずに生きられる。マウントをとる必要も、張り合う必要もないのだ。

武蔵小杉という街で、地に足をつけて暮らすことの心地良さを、徐々に知ることができた。