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失恋をきっかけに、恵比寿から都立大に引っ越した男。33歳になり、今が人生で1番モテる、と言えるワケ

上京する者たちは、年齢に合わせて居場所となる街を見つけていく。

ここで紹介するのは、30歳で自分に最高にフィットする街、都立大学に移り住んだ男。この街に魅了され、自分らしさを見出した。

等身大の毎日を過ごし続けた結果、ある出会いも訪れたのだった。



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【PROFILE】


四国生まれ。中学はヘルメット着用の自転車通学。私立大学卒業後、内資メーカーに就職した。年収900万円。

最近、ビリヤニ作りにはまっている。サカナクションの長年のファン。メガネ愛好家だが視力は裸眼2.0。ヴィンテージ家具を集めるのが好き。


傷心のアラサー男に効いた、穏やかな都立大セラピー


都立大に越して2年半。恵比寿にいた頃より起床が2時間早くなり、朝6時に目が覚める。

レコードに針を落とし、コーヒーを豆から挽き、駒沢公園まで歩くモーニングルーティンは、SNSの丁寧な暮らし枠としては十分だと思う。でも、発信欲はもうない。

都立大に来てから、自分を良く見せようと頑張らなくなった。港区に住む大学の同期は豪華リゾートなどの“非日常”を投稿するが、僕が大事なのは、上質な“日常”。

自分が心地良ければ満たされる。そんなふうに思えるこの街に住むきっかけは、人生初の大失恋だった。

結婚するつもりだった彼女にフラれて、やけ酒と傷心が重なり疲弊。見かねた友人に誘われた店が、都立大の『お料理bota』だった。


随分話しやすい店主に失恋を相談すると、「次の彼女作るしかないですね」とシンプルな解答をもらい、反射的に返していた。

「無理です、それが一番難しいんですから!」

ご近所さんらしき他の客がそんなやりとりを穏やかに笑ってくれて、ふっと楽になった。余裕のある客層に都立大っぽさを感じて、何度目かの訪問時には不動産屋に寄っていた。


いまではなじみのカフェもできて、日ごとの焼き菓子とこだわりのコーヒーを楽しむ。

サードプレイス的にこのカフェを利用する同類が多くて落ち着くのだ。


時折犬や子どもが前を通って平和そのもの。派手な集団や謎の年齢差カップルは皆無。

文化系男子にとってこんな住みやすい街はない。