港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。
女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。
タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。
▶前回:「最低な元カレに仕返しを…」泣き寝入りはしたくない。29歳女の最高の復讐とは
「カレー、超大盛にしといたから、今日はこれで満足しろってルビーに伝えて。アイツにこれ以上食わせないで」
そう笑った…(といっても、そのごくわずかな表情の変化で彼が笑ったのだとわかる人は、ほんの数人だろう)Sneetの店長ミチからカレーの入った保冷バッグを、ともみは感謝を伝えながら受け取った。
確かにずっしりとした重みがあり、バターチキン、キーマ、マトンの三種類のカレーを大サービスの量で入れてくれたのだろうと想像がつく。
普段から何かとルビーの食べ過ぎを注意する、ミチのルビーに対する干渉はまるで…と、ともみはふとミチに尋ねてみたくなった。
「ミチさんとルビーって、時々、兄妹みたいですよね。付き合いってどれくらいなんですか?」
TOUGH COOKIESがオープンすることになり、「アンタの役に立つから」と、光江からルビーを紹介されたのはBAR・Sneetでのことだった。その時からルビーが、ミチ兄(にぃ)ひさしぶりぃ!と懐いている様子だったし、ミチとは元々知り合いなのだと、その後にルビーから、なんとなくは聞いている。
「珍しいな。興味がでたのか?」
からかうような口調に変わった(これもミチをよく知る人しか気づけない、ごくわずかな変化)ミチに、ともみは少し気まずくなった。普段から他人を詮索せず興味を示さないのにどうしたのかと問われているのだろう。
いえ、興味というほどじゃ…とまごついたともみに、ミチが、そろそろ上がらなくていいのか?と言った。
そういえばまだお客様は帰られていない、とハッとしたともみが、もう一度ミチに礼を告げてからTOUGH COOKIESに戻ろうとしたその背に、ともみ、と、ミチの低い声がかけられて振り返る。
「なんかあれば話に来いよ。聞くだけでいいなら、オレでも聞ける」
― “なんか”というのは……。
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松本公子の件もだし次のお客様含めて先の展開が楽しみ!